高カルシウム血症とは?

高カルシウム血症(Hypercalcemia)

高カルシウム血症とは、血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか、または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態です。

主な原因には副甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、がんなどがあります。臨床的特徴としては多尿、便秘、筋力低下、錯乱、昏睡などがあります。

高カルシウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版
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高カルシウム血症の心電図

高カルシウム血症の心電図
文献1より 高カルシウム血症の心電図

QT短縮

血清カルシウム値の上昇によるQT短縮作用は古くから知られています2)。カルシウムの細胞外濃度が上昇すると、再分極の後期に内向きのカルシウムが増加するためQT間隔が短縮します。

高カルシウム血症

しかし、QT間隔の持続時間と血清カルシウム値との相関は直線的ではありません。QTピーク間隔(QRS波の始まりからT波の頂点まで)は、高カルシウム血症時に特に短縮し、血清カルシウム値と最もよく相関しています2)

これは、高カルシウム血症ではSTセグメントが短縮しており、STセグメントが完全に消失している場合も多いことが理由とされています3)

重度の高カルシウム血症(血清カルシウムが16mg/dL以上)の場合、T波の持続時間が長くなり、STセグメントが短縮したままでもQT間隔が正常に見えることがあります。

J波(Osborn wave)

文献4より 高カルシウム血症患者のJ波(Osborn wave)

J波(Osborn wave)は低体温で出現することがよく知られていますが、高カルシウム血症でも出現することがあり、1920年にKrausらによって高カルシウム血症患者のJ波が初めて報告されました4)

活動電位

高カルシウム血症

高カルシウム血症では細胞外Ca濃度が上昇しているため、Caの流入が発生する2相が短縮することになります。それによりSTセグメントが短縮し、結果的にQT間隔が短縮します。

参考文献

1)Electrocardiographic manifestations: electrolyte abnormalities. J Emerg Med. 2004 Aug;27(2):153-60.

2)Electrocardiographic Manifestations of Calcium Abnormalities. Ann Noninvasive Electrocardiol. 2016 Jan;21(1):7-9.

3)Hypercalcaemia and a short QT interval. QJM. 2020 Jan 1;113(1):55-56.←高カルシウム血症におけるST変化やU波の存在も報告されている。

4)Rare ECG finding in a patient with severe hypercalcaemia. BMJ Case Rep. 2021 Jun 21;14(6):e242000.←血清カルシウム濃度5.17 mmol/LでJ波を認め、治療後にJ波は消失。

心電図の読み方パーフェクトマニュアル P222-223

実力心電図 P140-141

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