upper common pathwayとは?

upper common pathway(上部共通伝導路)

upper common pathwayは上部共通伝導路や上位共通路と呼ばれる伝導路であり、房室結節組織と心房を結ぶ伝導路を指します。この概念は、AVNRTで観察される様々な電気生理学的現象を説明するために導入されましたが、本当に実在するかは議論が分かれています1)

upper common pathway(上部共通伝導路)

upper common pathwayの存在を示唆する特に代表的な現象は、AVNRT中の室房ブロックです。このような現象は、AVNRTの回路が心房から電気的に分離されていなければ説明できません。そのため、AVNRTは一般的に結節内リエントリーとして理解されており、upper common pathwayを介して心房に接続されているように模式的に表現されています2)

心電図所見

一過性室房ブロック

upper common pathway(上部共通伝導路)
文献3より AVNRTの心電図。逆行性P波をⅡ、Ⅲ誘導で偽性S波、V1誘導で偽性R波として認める。
upper common pathway(上部共通伝導路)
文献3より 4拍目で心房への興奮がブロックされており下壁誘導で偽性S波が消失している。

upper common pathwayの存在は頻拍中に心房への興奮伝導がブロックされる室房ブロックが発生することから示唆されます。これはupper common pathwayで伝導がブロックされることでリエントリーの頻拍が持続しているにも関わらず逆行性P波が消失します。

upper common pathway(上部共通伝導路)

リエントリー回路内でブロックが生じると心房への興奮がブロックされると共にリエントリーがブロックされるので頻拍が停止してしまいます。例えば、slow-fast AVNRTでfast pathwayがブロックされるとQRS波の後に逆行性P波はなくなりますが、リエントリーがブロックされるので頻拍は停止します。

upper common pathway(上部共通伝導路)

Wenckebach型室房ブロック

upper common pathway(上部共通伝導路)
文献4より AVNRT中のWenckebach型室房ブロック。矢印は逆行性P波。
upper common pathway(上部共通伝導路)
文献4より AVNRT中のWenckebach型室房ブロック。心内電位でHA時間が延長した後に心房の電位が消失している。

upper common pathwayがブロックされる室房ブロックはWenckebach型をとることがあります。つまり、upper common pathwayの伝導時間が徐々に延長していき最終的に逆行性P波が脱落します。房室解離に見えることがあり、特にAVNRTがwide QRSの場合には心室頻拍との鑑別に注意が必要です。

参考文献

1)The Upper Common Pathway in Atrioventricular Nodal Reentrant Tachycardia: A Comprehensive Review of Evidence and Current Perspectives. Rev Cardiovasc Med. 2024 Mar 15;25(3):109.

2)Dual atrioventricular nodal pathways physiology: a review of relevant anatomy, electrophysiology, and electrocardiographic manifestations. Indian Pacing Electrophysiol J. 2014 Jan 1;14(1):12-25.

3)Ventriculatrial block during atrioventricular nodal reentrant tachycardia suggesting existence of an upper common pathway. Int Heart J. 2005 Mar;46(2):333-8.

4)The Upper Common Pathway in Atrioventricular Nodal Reentrant Tachycardia: A Comprehensive Review of Evidence and Current Perspectives. Rev Cardiovasc Med. 2024 Mar 15;25(3):109.

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