冠静脈洞入口部起源
冠静脈洞入口部(CS ostium)とは冠静脈洞が右房へ開口する部位であり、右房後下部に存在しています。ここを起源とする心房期外収縮が冠静脈洞入口部起源の心房期外収縮と呼ばれます。

心電図所見

冠静脈洞入口部起源のP波形態については、主に同部位を起源とするfocal ATの報告から詳細に検討されています。Kistlerらの報告では、II・III・aVF誘導が全例陰性、aVL・aVR誘導が全例陽性で、V1誘導は「軽度陰性→陽性(−/+)」または「等電位→陽性(iso/+)」が大部分を占めました1)。この特徴的なP波形態は、冠静脈洞入口部起源の心房期外収縮の起源推定にも参考になります。
Kistlerらが作成したfocal ATのP波アルゴリズムでは、
① II・III・aVF:陰性
② aVL:陽性
③ V1:−/+ または iso/+
という組み合わせは、冠静脈洞入口部起源に対して感度86%、特異度98%でした2)。
下壁誘導(II・III・aVF)
冠静脈洞入口部は右房の後下方に位置するため、そこから発生した興奮は主に下方→上方へ心房内を伝播します。そのため、下壁誘導から遠ざかる方向に向かうためP波は陰性になります。

aVL誘導
冠静脈洞入口部は右房の後下方に位置するため、そこから発生した興奮は主に下方→上方へ心房内を伝播します。冠静脈洞入口部から上方へ向かうベクトルを仮に−90°付近とすると、aVL(−30°)との角度差は60°、aVR(−150°)との角度差も60°です。したがって両方の電極へ向かう成分を持ち、aVL・aVR誘導とも陽性になります。

V1誘導
冠静脈洞入口部起源では、冠静脈洞周囲の心筋束を介した左房への伝導と、右房内の低位から高位への伝導によって特徴的な心房興奮順序を呈します。このような時間的な興奮ベクトルの変化が、V1誘導における−/+の二相性P波の形成に関与すると考えられます。

冠静脈洞筋束を介した心房間伝導により、心房期外収縮の興奮は早期に左房後下方へ伝わります。この興奮はV1誘導から遠ざかる方向のベクトル成分をもつため、V1誘導におけるP波の初期陰性成分の形成に関与する可能性があります。

ただし、V1誘導の−/+またはiso/+は冠静脈洞入口部だけでなく、右/左心房中隔、perinodalなどの中隔近傍起源でかなり重複することも報告されています。したがって、12誘導だけで冠静脈洞入口部と断定するのは難しいです。

