異常Q波(abnormal Q wave)
異常Q波は心筋壊死を反映しますが2)、心室筋の一部が完全に興奮性を失ったり、伝導が遮断されるような状況(虚血、線維化、高カリウム血症、 薬剤など)でも生じる所見です。
異常Q波は以下の様に定義されます。
・幅が0.04秒以上
・深さがR波の1/4以上
・深さがR波の1/4以上
Ⅲ誘導のみあるいはaVL誘導のみに見られる異常Q波は病的意義はないとされています。あくまでも隣り合う誘導に異常Q波が認められる場合に心筋の壊死を疑います。
心筋梗塞と異常Q波
心筋梗塞後数時間で異常Q波が出現し、その後は持続します。梗塞サイズが小さく、再還流が早い場合は異常Q波が消失する場合もあります3)。
普段は電極直下の電流の影響が大きいため反対側の心筋の電流は心電図には反映されませんが電極直下の心筋が壊死すると、そこがまるで窓のようになり対側の電流がみえるようになり心電図に反映されます。Wilsonのwindow theoryとも呼ばれています。
R波は電極直下の心筋の起電力がないと生じないので、R波の高さも低くなります。壊死した心筋細胞が再生することはないので、心筋梗塞による異常Q波は持続することになります。
参考文献
2)Electrocardiographic Q-wave “remodeling” in reperfused ST-segment elevation myocardial infarction: validation study with CMR. JACC Cardiovasc Imaging. 2012 Oct;5(10):1003-13.←心筋梗塞では心電図上の異常Q波の有無は主に梗塞サイズによって決定される。