反時計方向回転(counter clockwise rotation)

移行帯がV1側に偏位している状態を反時計方向回転(左回転)と呼びます。「移行帯の右方移動」や「移行帯が早い」と表現されることもあります。

横断面で見た際に、心室中隔を時計の針に見立てた時に針が進む方向と反対(反時計方向)に心臓が回転(rotation)している状態です。実際には電気活動の変化による偏位なので、物理的に心臓が回転していなくても移行帯が反時計方向へ回転します。

定義
臨床的には「移行帯がV2以前に存在する場合を反時計方向回転」と定義されることが多いですが、疫学研究などで使用されるミネソタコードでは「移行帯がV3以前に存在する場合を反時計方向回転」と定義しています。そのためV2〜V3に移行帯が存在する時は文献によって扱いが異なっており、目的に応じて使い分けられています。

V2/V3付近の移行帯は臨床教科書2,3)では正常変異とみなされることが多いですが、ミネソタコードでは反時計方向回転に分類されます。
原因
反時計方向回転は電気活動の変化による偏位なので、物理的に心臓が回転していなくても発生します。例えば体格や心臓の位置などの物理的要因だけではなく、肥大型心筋症や心筋梗塞などの心室の興奮ベクトルの変化による電気的要因でも移行帯は反時計方向へと偏位します。

物理的要因
痩せ型
痩せ型では横隔膜が低下し、心臓が立位心になる場合にみられやすいとされていますが明確な根拠はありません。
大動脈硬化
高齢者などで胸部大動脈の硬化・拡張・伸展が生じると、左室流出路が右方に捻れ、上部中隔が右方へシフトし、移行帯が右方へ移動することがあります4)。
胸郭異常・占拠病変
胸郭形態の異常や、胸腔内の占拠性病変による影響で位置的変化が生じることで移行帯が反時計方向へと偏位する場合があります。
物理的要因
後壁梗塞
後壁の起電力が低下し、相対的に前壁側の興奮が優位になるため、V1〜V2でR波が増高しやすくなります。
肥大型心筋症
中隔の肥厚・シフトにより移行帯が右方へ偏位しやすくなります。
WPW症候群(A型)
WPW症候群のA型では左室側の副伝導路から早期興奮が始まるため、R波が早期に増高して移行帯が偏位する場合があります。
予後
移行帯の反時計方向回転のみでは病的意義は少ないとされています。健常人における反時計方向回転は全死亡リスクの低下と関連していると報告されています5)。
参考文献
2)Goldberger’s Clinical Electrocardiography
3)Chou’s Electrocardiography in Clinical Practice
書籍
今さら聞けない心電図 P98-99
心電図のみかた、考え方 基礎編 P258-262
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P18


