移行帯(transitional zone)

移行帯とは胸部誘導においてR波の振幅とS波の振幅が等しくなる部分です。通常の胸部誘導ではV1誘導から徐々にR波が大きくなり、S波は小さくなっていくので、S波がR波に移行する部分のことを指しています。

R波の振幅とS波の振幅が等しいということは、右室と左室の起電力がその部位で釣り合っていることを表しています。

右室と左室の起電力が釣り合うのは単純に考えれば両者の間に位置する心室中隔であり、正常では移行帯は心室中隔の延長上にあるV3〜V4誘導に存在すると考えられます。実際には左室と右室の起電力の差などからそう単純な話ではなく、移行帯は心室中隔の延長と一致しない場合も多いです。

定義
一般的には移行帯はR波とS波が等しくなる誘導、またはS波からR波が優位になる最初の胸部誘導と定義されることが多いです1)。
「R波とS波が等しくなる誘導」という定義では、R波とS波の振幅がV3誘導やV4誘導で等しければその誘導が移行帯になりますが、V3誘導でS波の方が大きく、V4誘導でR波が大きい場合は移行帯はその間に存在すると考えられ、移行帯は「V3とV4の間(V3-V4)」と表現されることもあります。

「S波からR波が優位になる最初の胸部誘導」という定義では、V3誘導でS波の方が大きく、V4誘導でR波が大きい場合は移行帯はV4誘導となります。

回転
体格や心臓の位置などの物理的要因や心筋肥大や脚ブロックなどの心室の興奮ベクトルの変化による電気的要因で移行帯は偏位します。これは移行帯が心室の興奮ベクトルの変化による影響を受けるからです。

横断面で足側から見上げた場合に、心室中隔を時計の針に見立てると、V1誘導方向への回転は反時計方向、V6誘導方向への回転は時計方向に一致します。

移行帯がV1〜V2誘導にある場合は反時計方向回転、移行帯がV5〜V6誘導にある場合は時計方向回転と呼びます。

移行帯がV3〜4に存在する場合は正常であり、「V2とV3の間」と「V4とV5の間」に移行帯が存在する場合も正常に含まれることに注意が必要です。

移行帯の偏位のみでは病的意義は少ないとされています。ただし、健常人における時計方向回転は心血管疾患死亡や全死亡リスクの上昇と関連していると報告されています3)。
参考文献
書籍
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P17-18

