VTとSVTの鑑別
wide QRS頻拍は心拍数が100回/分を超え、QRS幅が120msを超えるものを指します。wide QRS頻拍では心室頻拍(VT)と上室性頻拍(SVT)が鑑別にあがります。SVTは通常narrow QRSですが、変行伝導を伴う場合はwide QRSになるためです。

有病率だけで判断すると、wide QRS頻拍がVTである検査前確率は80%以上と報告されています。両者は治療や予後が大きく異なり、両者を鑑別する様々な方法が提唱されています。

房室解離

房室解離はVTを強く示唆する所見です。P波とQRS波が独立しており、QRS波のレートはP波より速くなっています。また、融合収縮、捕捉収縮も房室解離に類似する所見であり、VTを示唆します。

QRS幅

SVTのほとんどの症例において、QRS幅はRBBBパターンでは140ms、LBBBパターンでは160msであることが指摘されています2)。したがって、これより広いQRS幅は変行伝導である可能性が低く、VTがより可能性の高い診断となります。
心臓に器質的異常がない場合に発生するVTや、心臓に器質的異常がある場合でも中隔が最も早く興奮するVTでは、QRS幅は比較的狭いことがあります2)。
電気軸

QRS軸が右上方に存在する北西軸(-90°〜180°)は、どのような脚ブロックの組み合わせでも容易に達成されるものではないため、変行伝導を伴うSVTである可能性は低いです2)。
右脚ブロックでは左室から右室へ興奮が向かうため、通常は左軸偏位は生じません。同様に、左脚ブロックでは右室から左室へ興奮が向かうため、通常は右軸偏位は生じません。そのため、変行伝導を伴うSVTでは右脚ブロック+左軸偏位または左脚ブロック+右軸偏位を生じる可能性は低く、VTが示唆されます。
波形
いくつかの形態学的基準が提唱されていますが、波形が左右どちらの脚ブロックパターンかによって適用される基準が異なっています。

脚ブロックパターンの判断はV1誘導の終末の極性を見ることによって行われます。右脚ブロックパターンは終末の極性が陽性のものであり、左脚ブロックパターンはV1誘導の終末の極性が陰性のものです。

脚ブロックパターン別のVTとSVT基準が上の表にまとめられています。基本的にはVTでは通常の脚ブロック波形で見られない形態を呈しています。
アルゴリズム
Brugada Criteria、Vereckei Criteria、Pava Criteriaなど様々なアルゴリズムが提唱されています。

参考文献
2)Value of the 12-lead ECG in wide QRS tachycardia. Cardiol Clin. 2006 Aug;24(3):439-51, ix-x.