双極子(dipole)

双極子とは、大きさの等しい正と負の電荷がごく近い距離で対になって存在するものです。正極(+)と負極(−)が非常に近い距離で対になっているこの対を双極子と呼びます。双極子モーメント(強さ)は「電荷の大きさ × 距離」で表されます。

心筋
心筋の興奮の波面では興奮した部分は細胞の外側が相対的にマイナス、未興奮の部分は細胞の外側が相対的にプラスになっています。この境界に無数の微小なプラスとマイナスの対が並びます。これが微小双極子の集まりです。体表面から遠く離れて見ると、これら無数の微小双極子は1つの大きな双極子として近似できます。1つの双極子に等しい(等価)とみなせることから等価双極子とも呼ばれています。

心電図
双極子があると周囲の容積導体に電流が流れ電位分布ができます。体表面の電位差を測定しているのが心電図ですが、心電図はこの双極子が作る電場を測っていることになります。心臓全体の電気活動を1つの等価双極子として表した場合、その向き(方向)と大きさ(強さ)は、心臓の興奮・再分極の進行に伴って連続的に変化します。刻々と変化する双極子を時間の経過とともに追跡したものがベクトル心電図のループ(Pループ、QRSループ、Tループ)です。
12誘導心電図は、この変化する等価双極子をさまざまな方向から投影して見たものです。 ある瞬間の双極子の向きと大きさが、各誘導の波形の高さや向きに反映されます。心電図の電気軸やベクトルも等価双極子の向きと大きさを表したものです。
ちなみに「電流の向き」と「心ベクトルの矢印の向き」は逆になっていますが、心ベクトルがプラス電極に向かうと陽性波になるように設計されているので、「脱分極がプラス電極に向かって進むと陽性波」「脱分極がプラス電極から遠ざかると陰性波」という直感的なルールで波形を解釈できるようになっています。


