voltage discordance
voltage discordanceは、すべての四肢誘導の電位が低く(5mm未満)、少なくとも連続する2つの前胸部誘導の電位が正常または高い(10mm以上)と定義されます1)。
・すべての四肢誘導でQRS振幅が5mm未満
・少なくとも連続する2つの前胸部誘導でQRS振幅が10mm以上
・少なくとも連続する2つの前胸部誘導でQRS振幅が10mm以上
Jasonらの報告では、voltage discordanceの100例中51例が、従来の低電位を引き起こすことが知られている病態を有していました。
また、低電位の同定可能な病因と関連のない49例のうち、63%に左室または右室の拡張がみられたと報告しており、拡張型心筋症がvoltage discordanceの原因である可能性を示唆しています。
機序としては、電位の発生障害や伝達の変化のみによるものではなく、QRS波の電気軸の変化に関連している可能性が高いとしています。
例えば、心室活性化のベクトルが常に前後方向であれば、このベクトルに垂直な四肢誘導には小さな電位が生じ、横方向の心筋活性化時にはより大きなQRS波が刻まれる前胸部誘導には大きな振幅が生じます。そのため、拡張型心筋症の心臓では、心嚢液貯留や心筋の大量喪失がなくても、QRS軸の変化によりvoltage discordanceが生じることがあるとしています。
参考文献
1)Electrocardiogram voltage discordance: interpretation of low QRS voltage only in the limb leads. J Electrocardiol. 2008 Jul-Aug;41(4):281-6. ←voltage discordanceと拡張型心筋症との関連を示唆