左房調律(left atrial rhythm)
左房調律は異所性心房調律の一つであり、左房に興奮の起源があります。
心電図変化
V6誘導
左房調律ではV6誘導のP波が陰性になります2)。左房から右房の方向へ興奮が伝導するため、興奮ベクトルと反対の方向にあるV6誘導ではP波は陰性となります。
Ⅰ誘導
左房調律では左房から右房へ興奮するのでⅠ誘導のP波が陰性になることが多く、特に左肺静脈に近い部位で特徴的です。しかし、右肺静脈に近い場合はⅠ誘導のP波が陽性になることがあります。また、右心房の著明な肥大や拡張、房室接合部調律でもⅠ誘導のP波が陰性になることがあります2)。
dome and dart P wave
左房調律ではV1誘導に陽性の二峰性P波が見られることがあります。これをdome and dart P waveと呼び、滑らかで電位の低い初期成分の後に鋭く高いピークを有するP波と定義されています4)。前半の滑らかな部分(dome)は左房の興奮を反映しており、後半の鋭いピーク(dart)は右房の興奮を反映しています。
左心房の後方で発生した興奮が右心房に向かって伝導してくることで生じるとされており、そのため右房に近い誘導であるV1誘導で陽性波として認められます5)。
参考文献
3)Left atrial rhythm. Experimental production in man. Circulation. 1968 Jun;37(6):1000-14.
5)“Dome and dart” P waves. South Med J. 1978 Dec;71(12):1581-2.
書籍
心電図のみかた、考えかた 応用編 P30-36
レジデントのためのこれだけ心電図 P163-165