偶発性低体温症とは?

偶発性低体温症(accidental hypothermia)

低体温症とは、深部体温が35℃未満となることです。症状は、シバリングおよび嗜眠から錯乱、昏睡および死亡へと進行します。偶発性低体温症とは、 意図せずに深部体温が35℃未満に低下したものを指します。「偶発性(accidental)」とは「偶然の・意図しない」という意味であり、治療目的で意図的に体温を下げる場合(心臓手術など)と区別するための用語です。

原因

患者側要因:高齢者、泥酔、薬物中毒、低栄養、甲状腺機能低下症、脳血管障害、外傷後など

環境要因:寒冷曝露(冬山遭難、水難事故、路上での長時間放置など)

心電図所見

偶発性低体温症(accidental hypothermia)
文献1より 低体温症での心電図

低体温症は特徴的な心電図変化を引き起こし、RR間隔、PR間隔、QRS波、QT間隔を含むすべての心電図間隔が延長します2)。また、J点でのノッチを認めオズボーン波(J波)として知られています。

オズボーン波(J波)

オズボーン波の形態は、QRS波の終了部のJ点付近に陽性の盛り上がりとして現れ、尖ったノッチというよりは丸みを帯びたドーム様の波形が典型的とされます。「ドーム状(dome-shaped)」または「こぶ状(hump-like)」と表現されることが多いです。

J波と体温

オズボーン波は低体温症において比較的特異的な所見であり、体温が32.2℃の約80%の患者で発生すると報告されています。救急外来で低体温症を呈する患者の前向き研究では、30.5°C以下の深部体温を持つ患者の100%にオズボーン波を認めました3)

低体温患者におけるオスボーン波の存在と大きさは温度の関数であり、オズボーン波の大きさは温度と逆相関しているので低体温になる程オズボーン波は大きくなります。偶発性低体温症では復温に伴ってJ波が改善することが報告されています4)

偶発性低体温症(accidental hypothermia)
低体温患者におけるオスボーン波の存在と大きさは温度の関数であり、オズボーン波の大きさは温度と逆相関しているので低体温になる程オズボーン波は大きくなります。偶発性低体温症では復温に伴ってJ波が改善することが報告されています
文献4より 偶発性低体温症の復温に伴うJ波の改善

アーチファクト

人間は寒冷な環境にさらされると、環境から失われる熱を補うためにシバリングによる骨格筋の震えによって熱産生率を増加させます5)。低体温による震えで骨格筋が振動すると,心電図は明らかに不規則な筋電図によるアーチファクトによって基線や波形などの心電図の構成要素が歪んでしまいます。

偶発性低体温症(accidental hypothermia)
人間は寒冷な環境にさらされると、環境から失われる熱を補うためにシバリングによる骨格筋の震えによって熱産生率を増加させます5)。低体温による震えで骨格筋が振動すると,心電図は明らかに不規則な筋電図によるアーチファクトによって基線や波形などの心電図の構成要素が歪んでしまいます。
文献6より 低体温のシバリングによるアーチファクト

上記の心電図のII誘導には、著しい洞性徐脈(HR 39bpm)とオズボーン波によるQRS波の拡大が見られ、低体温による筋肉の震えに起因する基線のアーチファクトが見られます6)

参考文献

1)ECG Findings of Hypothermia. Am J Med. 2020 Nov;133(11):e619-e621.

2)The EKG in hypothermia and hyperthermia. J Electrocardiol. 2015 Mar-Apr;48(2):203-9.

3)A prospective evaluation of the electrocardiographic manifestations of hypothermia. Acad Emerg Med. 1999 Nov;6(11):1121-6.

4)J-wave change during rewarming therapy for accidental hypothermia. Acute Med Surg. 2021 Jan 19;8(1):e628.←深部体温の程度がJ波の振幅の高さに関係する

5)thermogenesis in humans: Origin, contribution and metabolic requirement. Temperature (Austin). 2017 May 22;4(3):217-226.

6)Main artifacts in electrocardiography. Ann Noninvasive Electrocardiol. 2018 Mar;23(2):e12494.

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