異方性伝導とは?

異方性伝導(anisotropic conduction)

異方性伝導とは、心筋組織が方向依存的に伝導速度を持つ性質です。心筋細胞の長軸方向では伝導が速く、短軸方向では伝導が遅くなるのが基本です。バッハマン束のように平行に並んだ心筋束で特に顕著に現れます。

異方性伝導(anisotropic conduction)
異方性伝導とは、心筋組織が方向依存的に伝導速度を持つ性質です。心筋線維の長軸方向では伝導が速く、短軸方向では伝導が遅くなるのが基本です。バッハマン束のように平行に並んだ心筋束で特に顕著に現れます。

異方性伝導の本質は「細長い細胞の形状+端に集中したgap junction+平行配列」による方向依存的な抵抗の違いです。

抵抗

心筋組織は伝導する部位によって抵抗の大きさが異なっています。

異方性伝導(anisotropic conduction)
心筋組織は伝導する部位によって抵抗の大きさが異なっています。
  • 細胞内伝導は抵抗が小さくて伝導が速いです。
  • 細胞間伝導(gap junctionを介した伝導)は抵抗が大きいので伝導が遅いです。

長軸方向では「細胞内を長く進む+接合部が少ない」ため全体として速く、短軸方向では「接合部を頻繁に通過する」ため遅くなります。 結果として、正常心室筋では長軸:短軸の伝導速度比がおよそ2〜3:1となり、心房の一部(バッハマン束や分界稜など)ではさらに大きくなることがあります。

細胞の形状と配列

心筋細胞は細長い形をしています。長さ:幅はおよそ5〜7 : 1程度になっています。

異方性伝導(anisotropic conduction)
心筋細胞は細長い形をしています。長さ:幅はおよそ5〜7 : 1程度になっています。
  • 長軸方向:興奮波が細胞の長軸方向に進むと、細胞内を進む距離が長いので細胞間の接合部(gap junction)を通過する回数が相対的に少なくなります。細胞質の抵抗は小さいため、伝導が速くなります。
  • 短軸方向:同じ距離を進むのに、多数の細胞間接合部を次々と通過しなければなりません。接合部の抵抗が大きいため、伝導が遅くなります。
異方性伝導(anisotropic conduction)
長軸方向:興奮波が細胞の長軸方向に進むと、細胞内を進む距離が長いので細胞間の接合部(gap junction)を通過する回数が相対的に少なくなります。細胞質の抵抗は小さいため、伝導が速くなります。

短軸方向:同じ距離を進むのに、多数の細胞間接合部を次々と通過しなければなりません。接合部の抵抗が大きいため、伝導が遅くなります。

ギャップ結合の分布

心筋細胞同士は主に介在板で電気的に結合しています。ギャップ結合(Gap junction)は主にコネキシンで構成され、細胞の両端の長軸方向に集中して分布しています。

異方性伝導(anisotropic conduction)
心筋細胞同士は主に介在板で電気的に結合しています。ギャップ結合(Gap junction)は主にコネキシンで構成され、細胞の両端の長軸方向に集中して分布しています。
  • 長軸方向では、端と端がしっかり結合しているため効率よく電流が流れます。
  • 短軸方向では、側方の結合が少なく抵抗が大きくなります。

この端に集中したgap junction分布が細胞の細長い形状と相まって異方性を強めます。

筋束

バッハマン束結節間伝導路は、平行に整然と並んだ心房心筋の束であるため、長軸方向への優先的な速い伝導が生まれます。これは特殊な伝導組織である刺激伝導系ではなく、筋束の構造そのものによって心房間の速やかな伝導を実現しています。

筋束
バッハマン束や結節間伝導路は、平行に整然と並んだ心房心筋の束であるため、長軸方向への優先的な速い伝導が生まれます。これは特殊な伝導組織である刺激伝導系ではなく、筋束の構造そのものによって心房間の速やかな伝導を実現しています。

文献

1)The discontinuous nature of propagation in normal canine cardiac muscle. Evidence for recurrent discontinuities of intracellular resistance that affect the membrane currents. Circ Res. 1981 Jan;48(1):39-54.←異方性伝導がgap junctionによる細胞間抵抗の繰り返しが本質であることを明らかにした

2)Directional differences of impulse spread in trabecular muscle from mammalian heart. J Physiol. 1976 Feb;255(2):335-46. ←心筋の長軸・短軸方向で伝導速度が異なることを定量的に示した。

3)Anisotropy of cardiac tissue: a major determinant of conduction? J Cardiovasc Electrophysiol. 1999 Jun;10(6):887-90.←異方性が伝導の主要決定因子であることを強調した総説

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