バッハマン束(Bachmann’s bundle)
バッハマン束は心房間束とも呼ばれ、心房の前壁で右房と左房の心房壁をつなぐ心筋束としてよく知られており、心房間伝導の主要な経路と考えられています1)。1916年にBachmannによって「anterior interatrial band」として報告されました2)。

解剖・組織学的特徴
バッハマン束は右心房の上大静脈と右心耳の接合部付近から左心房の左心耳基部や前壁へ、心房間溝を跨いで走る幅広で扁平な心房心筋の束です。刺激伝導系のヒス束や脚とは大きく異なり、線維鞘で周囲の心筋から完全に絶縁されていません1)。主に平行に並んだ心房の作業心筋(固有心筋)から構成されます。現在の主流の見解では組織学的に明確に特殊化された伝導組織とは見なされていません。優先的な伝導経路として機能するのは、主に筋線維の整然とした平行配列による異方性伝導によるものです。バッハマン束は主に「筋束(心筋の束)」であり、解剖・組織学的な意味では「刺激伝導系」には含まれません。
刺激伝導系との関係
狭義の刺激伝導系は、洞房結節、房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維 を指します。これらは組織学的に特殊心筋で、多くが線維鞘で囲まれています。バッハマン束は心房間の優先的伝導路として機能的に重要ですが、線維鞘には包まれていないので解剖・組織学的には心房筋の一部として扱われるのが一般的です。結節間路と同様に、刺激伝導系というよりは心筋の配列による機能的経路という位置づけです。
臨床的な意義
機能的には極めて重要で、障害されると心房間ブロックを生じ、P波の延長・二峰性変化や心房細動の基質になります。最近はペースメーカのターゲットとしても注目されています。
参考文献
2)The inter-auricular time interval. Am J Physiol. 1916;41:309–320.

