房室中隔欠損症(atrioventricular septal defect)
房室中隔欠損症は心房中隔と心室中隔が欠損している先天性心疾患です。単なる心房中隔欠損+心室中隔欠損とは異なって僧帽弁と三尖弁がくっついてひとつになっており、共通房室弁口とよばれることもあります。心室中隔欠損を伴う完全型と、伴わない不完全型に分けられ、不完全型は一次孔型心房中隔欠損と呼ばれることもあります。
心電図所見
PR間隔延長
PR間隔の延長(Ⅰ度房室ブロック)は房室中隔欠損症の50%以上で認められ、一般的には心房内伝導遅延が原因とされています2)。
左軸偏位
房室中隔欠損症は中等度から極度の左軸偏位を認めます2)。極端な左軸偏位では電気軸が-180°に達することもあります3)。これは房室接合部が解剖的に後下方に偏位すること4)、左脚前枝が相対的に低形成であること2)で心室の興奮が上方軸となるために生じる変化と考えられています。また、左室の乳頭筋の位置異常が電気軸の変化に関連しているとの報告もあります5)。
心房・心室肥大
心房と心室の中隔欠損により左心から右心へ血液が流入するため右心系の容量負荷となります。また、右心室から肺動脈→肺静脈を介して左心系に流入する血流量が増加するため左心負荷となります。これらの程度により様々な心房肥大・心室肥大を生じます。
その他
I誘導とaVL誘導にQ波を認め、S波はII、III、aVF誘導にみられ、特徴的なnotched upstrokeを伴います6)。半時計方向回転の脱分極がこれらの変化をもたらすことがベクトル心電図で報告されています3)。
参考文献
3)Electrophysiology follows anatomy? JACC Cardiovasc Imaging. 2009 Dec;2(12):1366-8.