動脈管開存症(patent ductus ateriosus)
動脈管は胎生期に大動脈と肺動脈をつなぐ構造物であり、通常は生後72時間以内に閉鎖します。しかし、出生後も動脈管が閉鎖せずに残存することがあり、これを動脈管開存症といいます。
大動脈の方が肺動脈より圧が高いため、血液の一部が大動脈から肺動脈へ流れます。そのため肺血流が増加し、左心系へ流れ込む血流量が増加することで左心負荷となり左心不全を発症します。
心電図所見
動脈管開存症の心電図は、小さなシャント(短絡路)の患者では、全く正常であることが多いです。中等度または大きめのシャントを有する患者では、洞性頻脈、心房細動、左室肥大、 左房拡大を示すことがあります。シャントが大きく肺動脈圧が高い患者では、右房拡大や両心室肥大の徴候がしばしばみられます2)。
左房拡大
動脈管開存症ではシャントにより肺動脈の血流が増加することで、肺静脈の血流量が増え、左房へ流れる血流量も増加します。左房への容量負荷となり、左房は拡大します。左房負荷所見として肢誘導では二峰性P波(僧帽性P波)、胸部誘導ではV1誘導の深い陰性P波(左心性P波)を認めます。
左室肥大
文献3より 動脈管開存症の左室肥大所見
動脈管開存症ではシャントにより肺動脈の血流が増加することで左心系への血流量が増加します。左室は容量負荷による左室肥大をきたします。V1誘導での深いS波、V5、6誘導で高いR波がみられます。
右室肥大
左心負荷が進行すると肺高血圧を合併し、その結果として右室肥大をきたすことがあります。右室肥大の所見としてV1誘導のR波増高、右軸偏位がみられます。
参考文献
2)Patent ductus arteriosus. Circulation. 2006 Oct 24;114(17):1873-82.