右脚ブロック(right bundle branch block:RBBB)
心筋の興奮は洞結節、心房、房室結節、ヒス束、左脚・右脚、プルキンエ線維の順に伝わります。
右脚ブロックとは、右脚の
・伝導が途絶した状態
をいいます。
ヒス束から伝わった刺激は右脚に伝導されず、左脚のみに伝導されることで左室の興奮が先に起こり、その後、右室に興奮が伝えられます。従って、右室の興奮は左室より遅れることになり、遅れた分だけQRS波は幅広く変形します。特にQRS波の後半部分がwideになります。
右脚は元々ブロックになりやすく、健康な人の中にも1~3%程度認めます。
右脚は1本の線維であるのに対して左脚は網目状の線維構造になっており、さらに右脚は左脚に比べると細いため伝導途絶が生じやすくなってます。
右脚ブロックの心電図
まずは房室結節からの興奮が左脚に伝わり、心室中隔が左室側から右室側に興奮するのでV1で陽性波、V6で陰性波となります。
そして左脚を伝わった興奮が左室全体に広がりV1で陰性波、V6で陽性波となります。
右室へは刺激伝導系を介さずに興奮が伝わるため、緩やかに伝導します。V1で陽性波、V6で陰性波となります。
作業心筋を緩やかに伝導しますのでV1で幅の広いR’波、V6で幅広いS波となります。
このようにして右脚ブロックの心電図波形が出来上がります。典型的にはV1でrSR’波、V6で幅広いS波が見られます。二次性ST変化としてV1誘導ではST低下、V6誘導ではST上昇が見られます。
右脚ブロックの診断基準
文献によって診断基準にバラツキがあります3)。
完全右脚ブロック(complete right bundle block : CRBBB)
完全右脚ブロックはQRS幅が120msec以上であり、右脚の伝導が途絶している状態です。
不完全右脚ブロック(incomplete right bundle branch block : IRBBB)
不完全右脚ブロックはQRS幅が120msec未満であり、右脚の伝導が完全には途絶しておらず、伝導が遅延している状態です。
その他の診断基準
アメリカのガイドラインの診断基準
日本循環器学会ガイドラインの診断基準
右脚ブロックは一般に左脚ブロックに比べて問題のないことが多く,ほかに心機能異常のない右脚ブロックの予後は良好です。治療は右脚ブロック自体には不要です。
参考文献
1)Right Bundle Branch Block: Current Considerations. Curr Cardiol Rev. 2021;17(1):24-30.
3)Diagnosis of right bundle branch block: a concordance study. BMC Fam Pract. 2019 May 6;20(1):58.
5)臨床心臓電気生理検査に関するガイドライン(2011 年改訂版)
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P92-93
ほぼ初めての心電図 P124-138
あなたが心電図を読めない本当の理由 P21-27