cardiac memory
脱分極異常に伴う再分極異常であるT波の異常が、脱分極異常が正常化してもしばらくの間持続する現象のことをcardiac memoryと言います。
どういうことかというと、例えばペースメーカ調律の場合、正常の伝導経路とは異なるため(右室ペーシング)心電図のT波部分が陰転化することがあります(2次性変化)。T波の陰転化は、洞調律(自己脈)に戻ればもとに戻ることが多いですが、T波の陰転化がもとに戻らず一定期間残ってしまうことがあります。
このように、異常な心臓の興奮が一定期間続いた場合、洞調律に戻って心臓の興奮が正常化した後も、心筋細胞に異常な興奮パターンが記憶(memory)されているかのように残存し、T波の陰転化が持続する状態を「cardiac memory」と表現しています。
Rosenbaumらは、右室ペーシングによる洞調律とは異なる異常な興奮が持続すると、再分極特性が変化し、ペーシング中止後にも再分極異常が残存してT波が変化し、それが緩徐に回復して数週間で正常化することを示して、cardiac memoryの概念を提唱しました2)。
cardiac memoryは以下のような場合に見られます。
・ペースメーカリズムが自己の洞調律に戻ったとき
・発作性上室性頻拍が停止して洞調律に戻ったとき
・間欠性脚ブロックから洞調律に戻ったとき
・発作性上室性頻拍が停止して洞調律に戻ったとき
・間欠性脚ブロックから洞調律に戻ったとき
参考文献
2)Electrotonic modulation of the T wave and cardiac memory. Am J Cardiol. 1982 Aug;50(2):213-22.
捨てる心電図 拾う心電図 P154-156
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