潜行伝導(concealed conduction)

心筋組織への興奮伝導が心電図に直接現れることなく発生することを”潜行(concealed)”伝導と呼びます1)。潜伏伝導、不顕性伝導とも呼ばれることがあります。また、潜行伝導が不応期を発生させることにより後に続く興奮伝導に影響を与えることがあります。

例えば、心室期外収縮では興奮が房室結節を逆伝導しますが、房室結節内で興奮が減弱・消失して心房まで伝導しないことが多いです。房室結節の逆伝導は体表心電図に反映されないため潜行伝導となり、潜行伝導によって不応期が発生します。

上記の心電図では、4拍目の心室期外収縮が逆行性に房室結節へ伝導しましたが、房室結節を完全に通過することはできませんでした。この”潜行(concealed)”伝導が房室結節の不応期を作り出し、その後の房室結節の伝導遅延を引き起こしています。次の心房の興奮(5つ目のP波(赤矢印))が房室結節の回復が不完全な相対不応期にあたるため、房室結節の伝導遅延が発生してPR間隔の延長をもたらしました。その結果、PR間隔が延長した間入性心室期外収縮となっています。

上記の心電図では、6拍目の心室期外収縮(2つ目の赤矢印)が逆行性に房室結節へ伝導し、”潜行(concealed)”伝導が房室結節の不応期を作り出しています。その後の洞結節からの興奮は、房室結節の絶対不応期にあたるため、伝導が途絶することで完全代償性休止期を伴う心室期外収縮となっています。

つまり、心室期外収縮の場合は潜行伝導によって房室結節の不応期が生じ、次の心房興奮が相対不応期にあたればPR間隔が延長し、絶対不応期にあたればQRS波は脱落します。
