右室梗塞(right ventricular infarction)
心臓の右室を灌流する右室枝が虚血となり、右室に心筋梗塞が生じた場合を右室心筋梗塞と言います。
心臓を輪切りにした図では前壁は下図のようになります。
右冠動脈の最初の枝は円錐枝であり、右室流出路に血液を供給するために前方を走行します。鋭角枝(acute marginal branch)は最大で2枝に分かれ、右室側壁に血液を供給します。さらに、左前下行枝は右室自由壁前部を灌流する枝を供給することがあります1)。右室梗塞は鋭角枝より近位部の閉塞で生じる可能性があります。
右室には心筋梗塞を起こしにくい独特の特徴があり、右室の心筋は薄く、左室よりも酸素需要量が低いこと、右室は収縮期と拡張期の両方で灌流されていることが知られています2)。
心電図変化
右冠動脈近位部閉塞による右室梗塞ではV1誘導と右側誘導(V3R〜V6R)の1mm以上のST上昇を認めます。また右冠動脈近位部閉塞では多くが下壁梗塞を合併しますので下壁誘導のST上昇を認めます。ミラーイメージでI誘導とaVL誘導のST低下を認めますが、「ST低下(I誘導 + aVL誘導) > 0.2mV」の右室梗塞に対する感度は94%、特異度は90%との報告もあります4)。
右室梗塞では早期に心電図を記録することが大切であり、右室梗塞の患者の半分でST変化が発症10時間以内に消失したという報告もあります5)。
診断基準
右室梗塞には診断基準が存在します。日本循環器学会の基準を以下に示します。
参考文献
5)Right ventricular infarction. N Engl J Med. 1994 Apr 28;330(17):1211-7.←右脚ブロックと完全房室ブロックは右室梗塞に伴う頻度の高い伝導障害
6)急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)←下壁STEMIの右室梗塞の合併率は10〜15%程度で、右室に加え左室の障害範囲が広い場合には低心拍出状態となる