肺血栓塞栓症とは？

肺血栓塞栓症(pulmonary embolism)

肺塞栓症とは、典型的には下肢または骨盤の太い静脈など、他の場所で形成された血栓による肺動脈の閉塞です。

肺塞栓症（PE） - 05. 肺疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

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肺血栓塞栓症の心電図変化

肺血栓塞栓症において有名な心電図特徴の一例として以下のものがあります。

右心負荷による変化

心電図変化が生じる原因としては、急激に発症する肺動脈圧上昇による右心負荷と考えられています。

動物モデルでは、実験的な急性肺高血圧症が右室の心内膜下の虚血を引き起こすことが示されており、これが右心筋の伝導と再分極の障害を引き起こしている可能性が指摘されています¹⁾。

塞栓症による閉塞の程度と、それに伴う右心の圧力と壁張力の増加に相関する右心負荷に起因するとの報告もあります²⁾。

S1Q3T3パターン

McGinnとWhiteは1935年にS1Q3T3パターンを初めて記述し、心電図基準を示しました³⁾。

S1Q3T3は、肺塞栓症以外でも発生する可能性があり²⁾、塞栓性肺塞栓症患者の16％、非塞栓性肺塞栓症患者の10％にS1Q3T3の心電図変化が認められました⁴⁾。

肺塞栓症以外では右側気胸⁵⁾や、肺動脈に進展した大動脈壁内血腫⁶⁾などで報告されています。

T波の陰転化

V1からV3のT波陰転化は急性肺血栓塞栓症の43%に見られたという報告もあります。

QTc difference (V1 – V6)

急性肺血栓塞栓症において、右心室の再分極が障害されることで右心室と左心室の間に再分極にかかる時間の差が生じ、V1（右心）とV6（左心）で QTc 差が 20ms 以上の場合、急性肺血栓塞栓症の感度 82.2％、特異性 100.0％との報告があります。

参考文献

1)Transmural right ventricular blood flow during acute pulmonary artery hypertension in the sedated dog. Evidence of subendocardial ischemia despite residual vasodilator reserve. Circ Res 1982;51:196.

2)Electrocardiographic manifestations of pulmonary embolism. Am J Emerg Med. 2001;19(6):514–19. 

3)McGinn S, White PD. Acute cor pulmonale resulting from pulmonary embolism its clinical recognition. JAMA. 1935;104(17):1473–80.

4) Petruzzelli S, Palla A, Pieraccini F, et al. Routine electrocardiography in screening for pulmonary embolism. Respiration. 1986;50(4):233–43.

5)Goddard R, Scofield RH. Right pneumothorax with the S1Q3T3 electrocardiogram pattern usually associated with pulmonary embolus. Am J Emerg Med. 1997;15(3):310–12. 

6) Shiau EL, Wu FZ, Huang YL, Wu MT. Aortic intramural hematoma with pulmonary artery extension mimics pulmonary embolism. Am J Emerg Med. 2013;31(10):1538.e3–4.

7)Diagnostic value of the corrected QT difference between leads V1 and V6 in patients with acute pulmonary thromboembolism. Medicine (Baltimore). 2017 Oct;96(43):e8430.