ブルガダフェノコピーとは?

ブルガダフェノコピー(Brugada phencopy)

ブルガダフェノコピーとは先天性のイオンチャネル機能障害がない場合に誘発される可逆的なブルガダ様の心電図パターンです1)。ブルガダ症候群とパターン分類(Type1,2)は同じですが、病因と予後に関しては大きく異なります。

「phenocopy」という用語は、特定の遺伝子型を保有していないにもかかわらず、その遺伝子型により発現される表現型がみられることです。つまり、ブルガダ症候群の遺伝子異常はありませんが心電図がブルガダパターンを呈するものをブルガダフェノコピーと呼びます。

診断基準

ブルガダフェノコピーの診断基準は以下の通りです9)。上から4つは必須項目になります。

原因

原因は6つのカテゴリーに分けられています9)

代謝疾患

文献3より 高カリウム血症(7.2mEq/L)でのブルガダフェノコピー(coved型)

低カリウム血症、高カリウム血症、代謝性アシドーシス、低ナトリウム血症がブルガダフェノコピーの原因として報告されています4)

機械的圧迫

文献5 非ホジキンリンパ腫が右室流出路を圧迫して誘発されたブルガダフェノコピー(coved型)

機械的な圧迫や心筋周囲疾患は、ブルガダフェノコピーに比較的よくみられます。右室流出路周囲の圧迫による影響が関係していると考えられています。

心筋および心膜疾患

文献6より 急性心膜炎によるブルガダフェノコピー

心膜炎や心筋炎がどのようなメカニズムでブルガダフェノコピーを誘発するかはさらに不明ですが、心筋障害や炎症が右室流出路のイオンチャネル機能障害を引き起こす可能性が指摘されています6)

虚血および肺塞栓症

文献7より 前下行枝近位部閉塞によるブルガダフェノコピー

ブルガダフェノコピーを引き起こす非典型的ST上昇型心筋梗塞が報告されています7,8)

心電図モジュレーション

低周波の干渉を減衰させるために使用されるハイパスフィルターに関連しており、ST-Tのような低周波の心電図成分が歪み、ブルガダパターンを呈することがあります2)

参考文献

1)Brugada phenocopy: Mechanisms, diagnosis, and implications. J Electrocardiol. 2019 Jul-Aug;55:45-50.

2)Brugada phenocopies: consideration of morphologic criteria and early findings from an international registry. Can J Cardiol. 2014 Dec;30(12):1511-5.

3)Hyperkalemia induced Brugada phenocopy. J Arrhythm. 2021 Jan 7;37(1):249-250. ←血清カリウムを正常化したところ、4時間以内にブルガダ様のST上昇の消失が認められた

4)Brugada phenocopy: new terminology and proposed classification. Ann Noninvasive Electrocardiol. 2012 Oct;17(4):299-314.←ブルガダフェノコピーを体系化した報告

5)Brugada phenocopy caused by a compressive mediastinal tumor. Ann Noninvasive Electrocardiol. 2018 May;23(3):e12509. 

6)Type 1 Brugada phenocopy in a patient with acute pericarditis. J Electrocardiol. 2018 Nov-Dec;51(6):1121-1123. ←心膜炎がイオンチャンネル電流または一過性外向き電流に影響を与えている可能性を

7)Unusual ST-Segment Elevation in the Anterolateral Precordial Leads: Ischemia, Brugada Phenocopy, Brugada Syndrome, All, or None? Circulation. 2017 Nov 14;136(20):1976-1978.←CirculationのECGチャレンジ

8)First description of a Brugada phenocopy in the inferior leads in the context of an acute inferior myocardial infarction. Europace. 2017 Jul 1;19(7):1219.

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