冠静脈洞調律(coronary sinus rhythm)
冠静脈洞調律は異所性心房調律の一つであり、冠静脈洞に興奮の起源があります。冠静脈洞周辺には心筋が存在しており、冠静脈洞の心筋は左心房後部の心筋とつながっています1)。
この領域は高度な自動能を持っているので、他の異所性心房調律と比較して発生頻度は多いです。正常な犬の心臓で、この部位を温めることで自動能を高めると、洞調律が冠状静脈洞調律に置き換わるという報告もあります2)。
心電図所見
右心房の下部にある冠静脈洞4)から興奮が発生するため、心房の興奮は右下から左上へ向かいます。そのためP波は下壁誘導であるII誘導、III誘導、aVF誘導で陰性となります。また、P波はI誘導で弱陽性、aVR誘導で陽性となります2)。
また、興奮がやや左上方向へ向かうためP波の電気軸は左軸偏位(-30〜-90°)となります3)。
参考文献
2)Further studies on coronary sinus rhythm. Am J Cardiol. 1958 May;1(5):579-83.
3)Coronary sinus rhythm in the polysplenia syndrome. Chest. 1973 Jun;63(6):952-8.←冠静脈洞調律の定義にP波の左軸偏位(-30〜-90°)を含めている
書籍
心電図のみかた、考えかた 応用編 P30-35
レジデントのためのこれだけ心電図 P163-165
心電図免許皆伝 P119-120