補充収縮(escape beat)
本来のQRS波よりも遅いタイミングで出現する収縮を補充収縮と呼びます。徐脈性不整脈に伴って発生することが多いです。

補充収縮は興奮が出現する部位によって大きく2種類に分けられます。上位に位置する房室接合部からの興奮である房室接合部補充収縮と下位に位置する心室からの興奮である心室補充収縮の2種類です。

房室接合部補充収縮(junctional escape beat)

房室接合部補充収縮は先行するP波がなく、洞調律時のQRS波とほとんど同じ形の幅の狭い(narrow)QRS波として出現します。これは洞調律時とほとんど同じ経路を通って興奮が伝導するためです。

房室接合部補充収縮が連続で出現した場合は房室接合部補充調律と呼ばれます。
心室補充収縮(ventricular escape beat)
心室補充収縮は先行するP波がなく、洞調律時のQRS波と比べて幅の広い(wide)QRS波として出現します。これは洞調律時と異なる経路を通って心室筋に興奮が伝導するので伝導に時間がかかるためです。

心室補充収縮が連続で出現した場合は心室(固有)調律と呼ばれます。
参考文献
1)Sinus Node and Atrial Arrhythmias. Circulation. 2016 May 10;133(19):1892-900.