筋ジストロフィー(muscular dystrophy)
筋ジストロフィーは、遺伝子異常によって筋線維の変性・壊死が進行し、徐々に筋力が低下する遺伝性筋疾患の総称です。代表的なものにDuchenne型、Becker型、筋強直性ジストロフィーなどがあります。骨格筋だけでなく心筋や刺激伝導系が障害される病型もあり、心筋症や不整脈が生命予後に関わる重要な合併症となります。
心電図所見
Duchenne型筋ジストロフィー

Duchenne型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子の異常によって生じるX連鎖性疾患です。心臓では心筋細胞の障害と線維化が進行し、拡張型心筋症様の病態を呈することがあります。心電図異常は心機能低下が明らかになる以前から認められることがあります。
特徴的な所見として、I、aVL、V5、V6などの側壁誘導における深いQ波や、V1における高いR波・R/S比の増大が知られています。これらには左室後基部〜側壁の心筋障害が関係すると考えられています。そのほか洞性頻脈、ST-T変化、心室性期外収縮などを認めることがあります2)。
V1誘導

Duchenne型筋ジストロフィーでは左室後基部〜側壁の心筋障害・線維化が起こります。その結果、後方へ向かう興奮ベクトルが減少し、相対的に前方であるV1方向へ向かうベクトルが優位になるためV1誘導のR波増高として現れます。

V1でR波が増高するのでR/S比 >1を示すことがありますが、小児では年齢によって正常でも認められるため年齢を考慮して評価する必要があります。
側壁誘導

Duchenne型筋ジストロフィーでは左室後基部〜側壁の心筋障害・線維化により、側壁へ向かう脱分極ベクトルが減少します。その結果、相対的に障害部位である側壁から遠ざかる初期ベクトルが強調され、側壁誘導であるI、aVL、V5–V6誘導で深いQ波を形成すると考えられています。

筋強直性ジストロフィー

筋強直性ジストロフィーでは刺激伝導系の障害が特徴的で、PR延長、房室ブロック、脚ブロック、QRS幅延長などがみられます。
参考文献
4)The pivotal role of ECG in cardiomyopathies. Front Cardiovasc Med. 2023 Jun 19;10:1178163.
