完全房室ブロックとは?

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)
文献1より 完全房室ブロックの波形
完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

完全房室ブロックはⅢ度房室ブロックとも呼ばれ、心房からの興奮伝導が心室へ伝わらず断絶している状態です。Ⅱ度以下の房室ブロックは心房と心室の伝導が繋がりが保たれているため、完全に断絶している完全房室ブロックとは区別されます。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

心電図所見

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

心房と心室の収縮はお互い無関係に生じるのでP波とQRS波は無関係です。P波自体は規則的に出現しており、心室の収縮は補充調律によって行われるのでQRS波自体も規則的に出現しています。そのため通常はPP間隔とRR間隔は一定ですが、不整になることもあるのでPP間隔、RR間隔が一定であることは必ずしも必要な条件ではありません。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

PP間隔の不整に関しては、QRS波を挟むPP間隔がQRS波が脱落した部分のPP間隔より短縮する心室相性洞不整脈という現象が知られています。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

QRS波の波形とレート(RR間隔)は補充調律が出現する部位によって変化します。接合部調律の場合はnarrow QRSとなり、心室調律時はwide QRSとなります。レートはより上位に位置する接合部の方が早くなり、下位に位置する心室では遅くなります。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

鑑別

2:1房室ブロック

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)
2:1房室ブロック

P波とQRS波が2:1で出現していて2:1房室ブロックに見えても、PQ間隔が一定になっていなければP波とQRS波が繋がっていない可能性、つまり房室伝導が途絶している可能性があります。2:1房室ブロックでは房室伝導が保たれているためPQ間隔は一定になりますが、完全房室ブロックでは房室伝導は途絶しているのでPQ間隔はバラバラになります。PP間隔とRR間隔は両者ともに一定になります。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)
2:1房室ブロック

高度房室ブロック

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

P波とQRS波がバラバラに出現して完全房室ブロックに見えても他のRR間隔が短い部分があればP波とQRS波が繋がっている可能性があります。これは、心房の興奮が心室に伝導する、つまりP波の後にQRS波が続くことで補充調律のQRS波が出現するタイミングより早いタイミングでQRS波が出現することになるからです。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)
高度房室ブロック

RR間隔の短縮が2ヶ所以上あり、その部分のPQ間隔が全て一致していれば決定的です。PQ間隔の一致はP波とQRS波がつながっていることを表しており、完全房室ブロックでは心房の興奮(P波)と補充調律の興奮(QRS波)が偶然にも全く同じPQ間隔になる可能性は低いです。1ヶ所でもP波とQRS波が繋がっていれば高度房室ブロックとなり完全房室ブロックは否定されます。

完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

等頻度房室解離

等頻度房室解離
完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

等頻度房室解離は心房の興奮が心室に届く前に房室接合部以下から興奮が発生している状態です。P波とQRS波の数が等しくなります。完全房室ブロックでは通常は心房レートの方が早いため、P波の数>QRS波の数となります。

等頻度房室解離
完全房室ブロック(complete atrioventricular block)

参考文献

1)Complete Heart Block. Circulation. 2019 Aug 6;140(6):516-519.

書籍

心電図の読み方パーフェクトマニュアル P288-289

ほぼ初めての心電図 P196-198

心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P50-51

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