心臓移植(Heart transplantation)
心臓移植とは重症心不全など他に代替治療の手段が無い末期心疾患の患者に対し、脳死状態にある臓器提供者から提供された心臓を移植する手術です。心臓移植において「ドナー」は心臓を提供する人、「レシピエント」は心臓を提供される、つまり移植を受ける人を指します。
術式

レシピエントの心臓を摘出し、同じ部位にドナーの心臓を移植する同所性心移植が最も一般的な術式です。両心房法では、ドナー心房を残存している生来の右心房と左心房に縫合することで、両大静脈とレシピエントの肺静脈からの血流の遮断を最小限に抑え、吻合部の数も少なく抑えます。レシピエントの生来の右心房と左心房は物理的にも電気的にも損傷がなく、ドナー心房に縫合され、電気的に分離されています2)。他にも両大静脈法(bicaval法)やmodified bicaval法が存在します。
心電図所見

心臓移植後は自己の心房由来のP波とドナーの心房由来のP波の両方が見られることがあります。自己の心房は電気的に隔離されているため興奮が心室へ伝導することはありません。ドナーの心房の興奮が心室へ伝導してQRS波が出現します。
レシピエント心房の自律神経は心臓移植によって切断されませんが、ドナー心臓の神経接続は摘出時に切断されます。そのためレシピエント心房拍動数は、アトロピン、運動、低血圧に反応して増加することが実証されています。しかし、自律神経支配が失われたドナー心房は運動や低血圧に対する反応が鈍化します2)。

