たこつぼ心筋症(Takotsubo Cardiomyopathy)
たこつぼ心筋症は「たこつぼ症候群」とも呼ばれ、精神的・肉体的ストレスがきっかけとなり、心臓の収縮機能が一時的に低下し、胸痛などの症状が出現する疾患です。心尖部の収縮低下、心基部の過収縮から「蛸壺(たこつぼ)」のような形をとることから名付けられました。

心電図所見
たこつぼ心筋症の心電図は時間的変化が見られます。4相性の変化に分類されており、急性期にST上昇し、発症1〜3日で陰性T波の最初のピークを認め、発症2〜6日に陰性T波が一時的に浅くなり、その後再び陰性T波が深くなり数ヶ月程度持続します2)。

ST上昇

たこつぼ心筋症ではST上昇が見られます。同じくST上昇が見られる急性心筋梗塞との鑑別が難しいですが、両者のST上昇の分布には違いがあり、たこつぼ心筋症ではV1でのST上昇がほとんど見られません1)。理由としては、心基部であるV1まで壁運動異常が及ばない、好発の高齢女性はSTレベルが元々低い、などが考えられています。aVRではST低下がみられ、心筋梗塞の場合と異なり鏡像変化が見られません。

陰性T波

ST上昇が軽減・消失した後に深い陰性T波が出現します。しばしば深さが1mV(10mm)を超えて巨大陰性T波となります。時間の経過で陰性T波は一旦浅くなり平坦化する傾向があるので改善したように見えますが、再び陰性T波は深くなり、陰性T波として2回目のピークを迎えます。徐々にT波は正常化しますが、陰性T波が数ヶ月残存する例もあります。このように陰性T波は時間経過で2峰性のピークを有します。

QT延長

陰性T波が深くなるのに伴ってQT間隔は延長します。再分極異常を反映しており、たこつぼ心筋症患者の50〜60%でQT延長が認められます。たこつぼ心筋症に伴う二次性(後天性)のQT延長であり、torsades de pointesが発生するリスクが上昇します。

参考文献
1)Electrocardiographic changes in Takotsubo cardiomyopathy. J Electrocardiol. 2021 Mar-Apr;65:28-33.

