偶発性低体温症とは?

偶発性低体温症(accidental hypothermia)

低体温症とは、深部体温が35℃未満となることです。症状は、シバリングおよび嗜眠から錯乱、昏睡および死亡へと進行します。

低体温症 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プロフェッショナル版
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偶発性低体温症の心電図

文献1より 低体温症での心電図

低体温症はカリウムチャネルを介したインパルス伝導が遅くなるため、特徴的な心電図変化を引き起こします。この結果、RR間隔、PR間隔、QRS波、QT間隔を含むすべての心電図間隔が延長します2)。また、J点でのノッチを認めオズボーン波(J波)として知られています。

J波と体温

オズボーン波は低体温症において比較的特異的な所見であり、体温が32.2℃の約80%の患者で発生すると報告されています。

オズボーン波(J波)

救急外来で低体温症を呈する患者の前向き研究では、30.5°C以下の深部体温を持つ患者の100%にオズボーン波を発見しました3)

低体温患者におけるオスボーン波の存在と大きさは温度の関数であり、オズボーン波の大きさは温度と逆相関しています。偶発性低体温症では復温に伴ってJ波が改善することが報告されています4)

文献4より 偶発性低体温症の復温に伴うJ波の改善

アーチファクト

人間は寒冷な環境にさらされると、環境から失われる熱を補うためにシバリングによる骨格筋の震えによって熱産生率を増加させます5)

低体温による震えで骨格筋が振動すると,心電図は明らかにランダムな電気的活動によってベースラインや波動などの心電図の構成要素が歪んでしまいます。

文献6より 低体温のシバリングによるアーチファクト

上記の心電図のII誘導には、著しい洞性徐脈(HR 39bpm)とオズボーン波によるQRS波の拡大が見られ、低体温による筋肉の震えに起因する基線のアーチファクトが見られます6)

参考文献

1)ECG Findings of Hypothermia. Am J Med. 2020 Nov;133(11):e619-e621.

2)The EKG in hypothermia and hyperthermia. J Electrocardiol. 2015 Mar-Apr;48(2):203-9.

3)A prospective evaluation of the electrocardiographic manifestations of hypothermia. Acad Emerg Med. 1999 Nov;6(11):1121-6.

4)J-wave change during rewarming therapy for accidental hypothermia. Acute Med Surg. 2021 Jan 19;8(1):e628.←深部体温の程度がJ波の振幅の高さに関係する

5)thermogenesis in humans: Origin, contribution and metabolic requirement. Temperature (Austin). 2017 May 22;4(3):217-226.

6)Main artifacts in electrocardiography. Ann Noninvasive Electrocardiol. 2018 Mar;23(2):e12494.

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