appropriate discordance
左脚ブロックでは、QRSの極性(向き)とST-Tの極性が反対方向になります。これは左脚ブロックにより2次性ST変化が生じるためです。QRSの極性が陽性であればST-Tの極性は陰性、QRSの極性が陰性であればST-Tの極性は陽性になります。
極性が反対であり不一致となっていることをdiscordanceと呼び、特に左脚ブロックではQRSとST-Tの極性が不一致であることは正常の変化であるためappropriate discordance(適切な不一致)と呼ばれています1)。この法則は「rule of appropriate discordance」や「principle of appropriate discordance2)」とも呼ばれます。
なぜこのように極性が反対になるかというと、左脚ブロックでは左室の興奮は通常の刺激伝導系からの興奮伝導ではないからです。そのため通常であれば再分極は外膜から内膜の方向へと進みますが、左脚ブロックでは内膜から外膜の方向へ再分極が進みます。これによりST-Tの極性が通常とは反対方向になります。