前壁心筋梗塞(anterior myocardial infarction)
心臓の前壁を灌流する左前下行枝が虚血となり、前壁に心筋梗塞が生じた場合を前壁心筋梗塞と言います。
前壁とは左室の前面を指しており、上図のように左室を立方体で表すと赤色の部分にあたります。
心臓を輪切りにした図では前壁は上図のようになります。
左前下行枝の閉塞部位が近位部か遠位部かで梗塞領域が異なり、それに伴い心電図変化も異なってきます。
左前下行枝近位部
下壁誘導(II、III、aVF)で強く鏡像変化が認められた場合に左前下行枝近位部の閉塞が疑われます。これは、前下行枝近位部の閉塞では前壁の大きな領域が壊死するためST上昇の程度が強くなり、それを反映するミラーイメージによるST低下も強くなるためです。
前下行枝近位部の閉塞では対角枝の灌流域も心筋梗塞となるため側壁心筋梗塞も生じます。そのため梗塞域は前壁+側壁となり非常に広範囲になります。
左前下行枝遠位部
下壁誘導(II、III、aVF)で強い鏡像変化が認められない場合は左前下行枝の遠位部の閉塞が疑われます。
左前下行枝遠位部の閉塞では灌流域の大きな対角枝は含まれないため側壁梗塞は生じません。そのため近位部での閉塞と比較すると梗塞域は小さくなります。