心房粗動(Atrial flutter)
心房粗動は心房拍数240~440拍/分の規則的波形を有するマクロリエントリー性頻拍です。一般的には三尖弁の周囲を旋回しています。
心房粗動では心房の興奮は等間隔なので基本的にはリズムは整ですが、心房から心室への伝導比が変動することがあり、この場合はリズムは不整になります。
定義
心房粗動の定義として以下のものが提唱されています1)。
分類
心房粗動の分類として心拍数をもとにしたものや3)、回旋の方向や部位をもとにしたものがあります。最近は三尖弁輪を興奮回旋する場合を「通常型」、それ以外の部位を興奮回旋する場合を「非通常型」心房粗動とよびます。
また通常型心房粗動の中でも三尖弁輪を「反時計方向」に興奮回旋する場合と「時計方向」に興奮回旋する場合に分けられ、反時計方向回転が一般的です。
心電図所見
心房粗動では鋸歯状波と呼ばれるノコギリの歯に似ている波形が下壁誘導(Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導)に見られることが特徴です。
心房の大きな回路を旋回(マクロリエントリー)するので、常に心房のどこかが興奮している状態です。
そのため波形が基線に戻ってフラット(等電位)になることはありません。
通常型心房粗動(反時計方向回転)
反時計方向回転の場合、鋸歯状波は最初の緩やかな下り勾配のプラトー区間に続いて急激な急降下があり、その後、低振幅の陽性成分を伴う急上昇があります。
反時計方向回転の場合、V1誘導では陽性のF波、V6誘導では陰性F波がみられます。
通常型心房粗動(時計方向回転)
反時計方向回転の場合、鋸歯状波は上に凸になります。
時計方向回転の場合、V1誘導では陰性のF波、V6誘導では陽性F波がみられます。
伝導比
心房粗動は通常、心房細動の基礎となる拍動の倍数(2:1、3:1、4:1など)で起こりますが、これは房室結節の生理学的特性により、His-Purkinje系に到達できる興奮の数が制限されるためです5)。
1:1心房粗動
2:1心房粗動
3:1心房粗動
5:1心房粗動
参考文献
2)Atrial flutter: more than just one of a kind. Eur Heart J. 2015 Sep 14;36(35):2356-63.
5)Atrial Flutter With Exercise-Induced 1:1 Atrioventricular Conduction. J Am Osteopath Assoc. 2018 May 1;118(5):337-340.←1:1房室伝導の心房粗動は、運動負荷試験によって誘発されることがある。
6)Atrioventricular 2:1-conduction via an accessory pathway during left atrial flutter unmasking WPW syndrome: a case report. Eur Heart J Case Rep. 2022 Jun 28;6(7):ytac250.←洞調律時にはデルタ波がなく、2:1心房粗動時に出現した。
7)Cavotricuspid isthmus ablation for atrial flutter: Anatomic challenges and troubleshooting. HeartRhythm Case Rep. 2020 Mar 16;6(3):115-120. ←CTIアブレーションのアプローチ
8)Atrioventricular Conduction During Atrial Flutter. Circulation. 2020 Nov 3;142(18):1783-1786.←心房粗動は周期長が極めて一定している。
書籍
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P50-51
ほぼ初めての心電図 P238-242