fine VF
fine VFとは振幅の小さい心室細動のことです。fineは「細かい」という意味で用いられており、それに対して「粗い」という意味でcoarse VTという言葉も存在します。
ちなみに聴診で聞こえる肺音のfine crackles、coarse cracklesも同じ意味です1)。
coarseからfineへ
図1の心電図は時間経過に伴いcoarse VFからfine VFへ移行する様子を記録したものです。
通常、心室細動が発生した場合、最初はcoarse VFとして始まります。その後、心筋の収縮力がさらに低下して振幅が小さいfine VFに移行し、さらには心静止に移行します。厳密な定義はありませんが振幅0.2mV(2mm)以下の場合が多いです。
心静止と判別が困難な場合があり、対策としては心電図の感度を上げたり、四肢誘導があれば別の誘導で確認したりすることもあります。
fine VFとAED
AEDのエラー
fine VFはAEDの解析でVFと認識されない場合があり、MacDonaldらは、3,448件の院外心停止のうち1.6%でAEDのエラーにより除細動が行われず、その内80%はfine VFで発生したと報告しています2)。
総務省消防庁による調査では、3年間に計 421 件のAED不具合が報告され、そのうちショック適応ありを不要と判断した症例が 143 件(34%)ありました4)。
AEDの感度・特異度
AEDには波形解析ソフトが搭載されており、AHA(米国心臓協会)、AAMI(米国医療機器振興協会) による基準を達成するように作られています
感度よりも特異度に重きを置いた基準であり、除細動適応外の波形に電気ショックを行わないようにすることを第一として、 そのために除細動が必要な波形が除細動適応外と判定されることは、ある程度許容されるように設定されています。
特異度を高くしているのは、一般市民によってAEDが使用されることを念頭に、洞調律などのショック不要の際にAEDが誤って電気ショックをすることのないよう安全性を高めるためです。
図2は日本で使用可能な 3 社の AED による感度と特異度の比較であり、解析システムは AED の機種によって異なりますが、全ての機種で感度はやや低く、特異度は高く設定されています。
解析システムの限界
Philips社HeartStartシリーズではSMART analysis algorithmという波形解析システムが導入されています。
心拍数、伝導性、安定性の 3 つをパラメータとしたグラフ上にショッククライテリアとなる境界面を設定しており(図3)、この境界面より上であればショックが必要、下であればショックは不要と判断されるアルゴリズムとなっています。
ショックが必要な心電図波形は赤い丸で、ショックが不要な心電図波形は緑の丸で示されています。
ショック適応に関して特異度は高く、感度はやや低く設定されているため、ショッククライテリアである境界面より上には緑の丸がないのに対し、境界面の下には赤い丸が混在しています。
つまり、ショック適応であるにも関わらず、ショック不要と判断される場合があることを表しています。
参考文献
4)総務省消防庁 救急企画室: 消防機関においてAEDの不具合が疑われた事例に関する調査
5)ペースメーカーと干渉してAEDが作動しなかった院外心停止の 1 症例.日救急医会誌 19 : 1047-1051, 2008.