Peguero-Lo Presti Criteria

2017年にPegueroらが提唱した新しい左室肥大の診断基準であり、Peguero Criteriaとも呼ばれています。胸部誘導において最も深いS波を示す誘導のS波とV4のS波を足したものが、女性は23mm以上、男性は28mm以上の場合に左室肥大と診断します。V4誘導のS波が最も深い場合、S波の振幅を2倍にして計算します1)。

心室筋の興奮は下図のように4段階の脱分極ベクトルで説明され、QRS波もそれぞれに対応しています。最初のベクトル(黄)は心室中隔、2つ目のベクトル(橙)は心内膜の脱分極を表しています。心室中隔の延長線上にある電極、つまり12誘導心電図ではV3、V4誘導で考えると、これらの興奮は通常は心室脱分極の最初の30msに反映されます。左室自由壁から心外膜の脱分極を表すと考えられる後半の第3(赤)、第4ベクトル(青)は50msより早くは発生しません。したがって、軽度から中等度の左室肥大患者に生じる心電図変化は、V3、V4誘導ではS波に対応するQRS波の後半部分によりよく反映されると考えられます。

通常はV3、V4誘導に対して直交する方向に興奮ベクトルが向かうのでV3、V4誘導ではR波とS波の大きさが等しくなりますが、左室肥大では心筋の肥大と心臓の回転によって興奮ベクトルが背側方向へ向かうためV3、V4誘導のS波が深くなります。したがって、早期にS波の変化を特定することで、体表面心電図の感度が向上する可能性があります。
