左脚後枝ブロック(left posterior fascicular block:LPFB)
左脚後枝ブロックは、左心室の下・後方領域である左心室流入路に向かう左脚の後枝の心室内伝導障害です。
興奮はまず左心室の中隔を活性化し 、左脚前枝に伝わり、前外側乳頭筋の基部に向かい、心内膜表面に沿って左室上外側と右室へ伝導します1) 。
左脚後枝は前枝より太くて短いです。また、左心室の流入路に位置し、流出路に比べて乱流が少ないとされています。そして、左脚前枝は左冠動脈前下行枝のみから栄養されているのに対して後枝は左冠動脈前下行枝と右冠動脈の2本から栄養されているため障害されにくいとされています2)。
左脚後枝のみのブロックは非常にまれであるため、左脚後枝ブロックが存在する場合、多くはより出現しやすい右脚ブロックを伴います2)。
心電図変化
左脚後枝ブロックでは興奮は左脚前枝を通って左に向かい、その後に後枝の方向である右下方へ向かって興奮します。そのため右軸偏位となります。
下方誘導(Ⅱ、Ⅲ、aVF)では最初の左方への興奮によりq波ができ、その後の右下方への興奮により高いR波が形成されます。Ⅲ誘導と同じ方向へ向かうため、R波がⅢ誘導で一番高くなります。
同様に、aVL誘導では最初の左方への興奮によりr波ができ、その後の右下方への興奮により深いS波が形成されます。
左脚後枝ブロックの診断基準
左脚後枝ブロックの診断基準の一例を以下に示します4)。
・電気軸は90°〜180°の間
・IとaVLのrSパターン
・IIIとaVFのqRパターン
・QRS持続時間120ms未満
・IとaVLのrSパターン
・IIIとaVFのqRパターン
・QRS持続時間120ms未満
参考文献
2)Hemiblocks revisited. Circulation. 2007 Mar 6;115(9):1154-63. ←ヘミブロックのレビュー
4)J Am Coll Cardiol. 2009;53(11):976.
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P100-101