心房粗動(Atrial flutter)
心房粗動は心房拍数240~440拍/分の規則的波形を有するマクロリエントリー性頻拍です。
定義
2001年、国際的な専門家グループは心房粗動の定義を次のように提唱しました1)。
分類
心房粗動の分類として心拍数をもとにしたものや3)、回旋の方向や部位をもとにしたものがあります。
最近は三尖弁輪を興奮回旋する場合を「通常型」、それ以外の部位を興奮回旋する場合を「非通常型」心房粗動とよびます。
心電図所見
メカニズムは、心房に限局したマクロリエントリーです。通常型の場合は回路は前方に三尖弁、上方に上大静脈の開口部、下方に下大静脈の開口部の組み合わせで境界を形成しています。
特徴的なギザギザの鋸歯状パターンは下壁誘導に見られ、これは最初の緩やかな下り勾配のプラトー区間に続いて急激な急降下があり、その後、低振幅の陽性成分を伴う急上昇があります。
・時計回転→下壁誘導:陽性粗動波、V1誘導:陰性粗動波
心房粗動は通常、心房細動の基礎となる拍動の倍数(2:1、3:1、4:1など)で起こりますが、これは房室結節の生理学的特性により、His-Purkinje系に到達できる興奮の数が制限されるためです5)。
心房の大きな回路を旋回(マクロリエントリー)するので、常に心房のどこかが興奮している状態です。そのため波形が基線に戻ってフラットになることはありません。
1:1心房粗動
2:1心房粗動
3:1心房粗動
5:1心房粗動
参考文献
2)Atrial flutter: more than just one of a kind. Eur Heart J. 2015 Sep 14;36(35):2356-63.
5)Atrial Flutter With Exercise-Induced 1:1 Atrioventricular Conduction. J Am Osteopath Assoc. 2018 May 1;118(5):337-340.←1:1房室伝導の心房粗動は、運動負荷試験によって誘発されることがある。
6)Atrioventricular 2:1-conduction via an accessory pathway during left atrial flutter unmasking WPW syndrome: a case report. Eur Heart J Case Rep. 2022 Jun 28;6(7):ytac250.←洞調律時にはデルタ波がなく、2:1心房粗動時に出現した。
7)Cavotricuspid isthmus ablation for atrial flutter: Anatomic challenges and troubleshooting. HeartRhythm Case Rep. 2020 Mar 16;6(3):115-120. ←CTIアブレーションのアプローチ
8)Atrioventricular Conduction During Atrial Flutter. Circulation. 2020 Nov 3;142(18):1783-1786.←心房粗動は周期長が極めて一定している。
書籍
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P50-51
ほぼ初めての心電図 P238-242