電気軸(electrical axis)
一般的に電気軸とは、心室の電気的興奮をベクトルと呼ばれる矢印で表したものになります。平均QRS電気軸(平均QRSベクトル)とも呼ばれていて、ÂQRSと略される場合もあります。それぞれの心室筋の興奮ベクトルはバラバラですが、心室全体を平均して一つのベクトルで表現したものがQRS平均電気軸です。

電気軸はニ次元平面で判断するため、冠状断で同一平面上にある肢誘導(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVR、aVL、aVF誘導)で判断します。

ベクトルには向きがありますが、Ⅰ誘導の方向を0度として、反時計方向は0からー180度の負の角度、時計方向は0から180度の正の角度で表現します。各誘導は下の図の角度に対応しています。

電気軸の分類

電気軸の分類には、大きく分けて5つの種類があります2)。電気軸の角度によって分類されており、-30°〜90°が正常軸、90°〜180°が右軸偏位、-30°〜-90°が左軸変位、-90°〜-180°が北西軸、角度不明が不定軸になります。

平均QRS電気軸シミュレーター
正常軸とは?
電気軸の判断
各誘導でのベクトルはQRS波の振幅の総和で判断します。R波は陽性(+)、Q波・S波は陰性(-)で計算し、Q波+R波+S波をQRS波の代数和(net QRS deflection)と呼びます。文献によってはR波とS波の和で判断している場合もあります3)が、電気軸はQRS波全体のベクトルで決まるので厳密にはQ波も含めて計算します4)。
QRS波の代数和シミュレーター
電気軸は胸部誘導のうち2つの誘導を選んでそれぞれの誘導のベクトルから判断します。ベクトルが陽性か陰性かさえ分かればおおよその電気軸は求められます。肢誘導のうちⅠ誘導とaVF誘導を用いると2つの誘導は直交しているため軸の方向がシンプルでわかりやすいです。
Ⅰ誘導のQRS振幅和が陽性、aVF誘導のQRS振幅和が陽性であれば電気軸は正常軸の範囲内になります。正確に正常軸かどうかを判断する場合はⅠ誘導とⅡ誘導が陽性であれば正常軸の範囲である0度から-30度をカバーしているため正常軸が確定します。この他にもEinthovenの三角形を用いる方法などが存在します。

注意点
Ⅱ誘導
Ⅰ誘導とⅡ誘導のQRS波の代数和から電気軸を求める際には、各誘導のベクトルを単純に合成するのではなく垂線の交点を求める必要があります。 心電図の各誘導で記録されるQRS波の代数和は心臓の平均電気ベクトルを各誘導軸に投影した成分を表しています。そのため、Ⅰ誘導(0°)とⅡ誘導(+60°)の軸上にそれぞれの代数和をとり、その点から各誘導軸に垂線を引くと2本の垂線の交点が元の心ベクトルの先端となります。原点からこの交点に向かう方向が正しい平均QRS電気軸です。一方、Ⅰ誘導とⅡ誘導のベクトルをそのまま加算すると、両誘導軸が直交していないため実際とは異なる方向を示すことがあります。電気軸の算出ではベクトルの単純加算と投影成分からの再構成を区別する必要があります。
aVF誘導
電気軸はI誘導とaVF誘導のQRS波の代数和から簡単に求めることができます。ただし、I誘導とaVF誘導では電位に対する感度が異なるため、両者の振幅をそのまま直交座標に当てはめると誤差が生じます。理想的なEinthovenの三角形モデルでは、aVF誘導の感度はI誘導の√3/2倍(約0.866倍)であり、正確な電気軸を求めるにはaVF誘導の振幅を2/√3倍(約1.155倍)に補正する必要があります。しかし、この補正による電気軸の変化は最大でも約4.1°と小さいので通常は問題となることはほとんどありません。そのため、日常診療ではI誘導とaVF誘導の振幅をそのまま用いる方法が広く利用されています。
参考文献
2)Diagnostic approach to cardiac arrhythmias. J Cardiovasc Pharmacol. 1991;17 Suppl 6:S24-31.
書籍
ほぼ初めての心電図 P140-157
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P5-6
心電図のABC P25-27

