1度房室ブロック(First degree atrioventricular block)

1度房室ブロックは心房から心室まで興奮が伝わる間における伝導遅延であり、心電図上のPQ間隔が通常より延長している場合に定義されます2)。

PQ間隔は心房が興奮する時間、房室結節が興奮する時間、ヒス-プルキンエ繊維が興奮する時間の3つの合計時間になっています。この3か所のいずれかの部位で伝導遅延が生じることでPQ間隔が延長します。1度房室ブロックはそのほとんどが房室結節内の伝導遅延ですが、心房やヒス-プルキンエ繊維の伝導遅延で生じることもあります。

1度房室ブロックは「ブロック」という名称ではありますが、あくまで伝導遅延であり伝導途絶ではないのでP波の後には必ずQRS波が続きます。2度以上の房室ブロックでは伝導が途絶することでP波の後のQRS波が脱落する所見を認めます。

一般的には予後良好ですが、PQ間隔の延長と心房細動、心不全、死亡率の有意な増加との間に関連性がある可能性を示唆する報告もあります3)。罹患した患者は心房細動や高次房室ブロックを発症するリスクが高いことが証明されているので、定期的な評価が不可欠です。
心電図所見
PQ間隔延長
第1度房室ブロックの定義は、PQ間隔が0.20秒を超え、心房-心室伝導が破綻していない、つまりP波の後には必ずQRS波が続くことです4)。PQ間隔の正常値は0.12秒から0.20秒であり、PQ間隔>0.20秒がPQ間隔延長です。

PQ間隔が延長していても、QRS波の脱落が見られる場合は1度房室ブロックではありません。例えば、PQ間隔が延長した2度房室ブロックは「PQ間隔延長+2度房室ブロック」であり、「1度房室ブロック+2度房室ブロック」ではありません。そのため1度房室ブロックと2度以上の房室ブロックが同時に成り立つことはありません。

PQ間隔が0.30秒より延長すると心房と心室の同期性が失われて心拍出量低下が生じる場合があり病的とされます5)。PQ間隔が0.30秒以上延長した第1度房室ブロックは、 “marked” first degree atrioventricular blockと呼ばれます。

P波延長

1度房室ブロックはそのほとんどが房室結節内の伝導遅延ですが、心房内の伝導遅延でも生じることがあり、その場合はP波が延長して幅が広くなります。

心房内の伝導遅延では右房と左房の両方が伝導遅延をきたしていることが多く、場合によっては心房間ブロックも合併していることがあります。心房間ブロックでは下壁誘導で2峰性のP波を呈する部分心房間ブロックの合併が多く、高度心房間ブロックの合併では下壁誘導で2相性P波が見られます。

参考文献
2)First degree atrioventricular block. Eur Heart J. 1984 Mar;5 Suppl A:107-9.
5)2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
書籍
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P84-85
ほぼ初めての心電図 P191-192
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P41-43


