移行帯(transitional zone)

移行帯はR波の振幅とS波の振幅が等しくなり入れ替わる点、つまりS波がR波に移行する部分のことを指します。通常はV1誘導から徐々にR波が大きくなり、S波は小さくなっていきます。R波の振幅とS波の振幅が等しいということは、右室と左室の起電力がその部位で釣り合っていることを示唆します。

正常では移行帯は心室中隔の延長上にあるV3〜V4誘導に存在します。R波とS波がV3誘導またはV4誘導で等しければその誘導が移行帯になりますが、V3誘導でS波の方が大きく、V4誘導でR波が大きい場合は移行帯はその間に存在すると考えられ、移行帯はV3-V4誘導と表現されます。

移行帯がV1〜V2誘導にある場合は反時計方向回転、移行帯がV5〜V6誘導にある場合は時計方向回転と呼びます。体格や心臓の位置、心筋の肥大などで移行帯は偏位します。移行帯の偏位のみでは病的意義は少ないです。

参考文献
書籍
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P17-18