Ⅰc flutter

抗不整脈薬の分類としてVaughan-Williams分類があり、その中のⅠc群抗不整脈薬を投与することにより発生する心房粗動のことをⅠc flutterと呼びます2)。
Ⅰc群抗不整脈薬であるフレカイニドやピルシカイニドは心房性不整脈をコントロールするために最も頻繁に処方される薬剤の一つです3)。心房細動によく使われる一方で、心房粗動ではⅠc flutterを生じるため用いるべきではないとされています。

1:1伝導の心房粗動は、急速に心室細動のような生命を脅かす不整脈に移行する可能性があります1)。クラスⅠcの抗不整脈薬は、心房細動を心房粗動に変化させることが報告されており4) 、現在のガイドラインでは、1:1伝導の心房粗動を予防するために房室結節の伝導を抑制する薬剤(βブロッカー、Ca拮抗薬)とクラスⅠc薬剤の併用を推奨してます5)。

また、心房細動の患者がもともと心房粗動を合併していることもあり、洞調律、心房細動、心房粗動を行き来している可能性を常に考慮する必要があります。

Naチャネル遮断薬の効果
Naチャネル遮断薬はNaの細胞内への流入を抑えること活動電位の立ち上がり速度を抑え、心房筋の伝導速度を低下させます。

また、Naチャネル遮断薬が心房筋の一部の興奮伝導をブロックすることでリエントリー回路が形成されやすくなることで心房粗動が引き起こされると考えられています6)。

心電図所見
2:1心房粗動では不応期で伝達されなかった心房の興奮が、心房筋の伝導速度が低下することで不応期を脱したタイミングで房室結節に到達するようになることで1:1伝導の心房粗動となります。心房筋の伝導速度は低下しているものの、1:1伝導であるため2:1伝導の心房粗動と比べるとより頻拍となり心拍数は上昇します。


心室応答がかなり速い1:1伝導が存在する場合は変行伝導によりQRS波がwideになることが多く、心室頻拍との鑑別診断が困難となる場合があります1)。


参考文献
1)1:1 atrial flutter induced by flecainide, whilst the patient was at rest. Am J Emerg Med. 2018 Nov;36(11):2131.e3-2131.e5.←安静時の薬物投与により生じたⅠc flutter
3)2016 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with EACTS. Eur Heart J. 2016 Oct 7;37(38):2893-2962.←ヨーロッパの心房細動に関するガイドライン
書籍
わかる!読める!心電図ガイド症例解説Q&A P114-121
深読みしないDr.田宮&Dr.村川の心電図ディスカッション P34-37
今さら聞けない心電図 P290-291
上級医がやっている危ない心電図の見分け方 P21-23
Hospitalist Vol.9No.3 2021(特集:不整脈1 上室性不整脈) P658-660