ATP感受性心房頻拍(ATP-sensitive atrial tachycardia)

通常の心房頻拍はATP(アデノシン三リン酸)では頻拍の停止は得られませんが、少量のATPによって停止する心房頻拍が存在し、これをATP感受性心房頻拍と呼びます。日本の家坂先生によって1997年に報告2)されておりIesaka ATとも呼ばれています。

通常の心房頻拍はATPにより房室結節の伝導をブロックすることで心室への伝導がなくなるので、QRS波は出現しなくなりますが心房頻拍による心房の興奮自体は持続しているためP波は頻拍の周期で持続します。ATP感受性心房頻拍では少量のATPを使用することで房室結節の伝導をブロックする前に心房頻拍自体が停止します。

ATP感受性心房頻拍はヒス束や房室結節、三尖弁輪の近くのマイクロリエントリーを機序としています。ヒス束の近くに興奮の起源がある場合はヒス束近傍心房頻拍とも呼ばれます。

ATP感受性の機序としては、リエントリー回路内に含まれたCaチャネル依存性組織がATPにより伝導ブロックされるためと考えられています。これによりリエントリーが停止することで頻拍自体が停止します。

参考文献
書籍
今さら聞けない心電図 P232-233