高カリウム血症(Hyperkalemia)
高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることであり、通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生します。

心電図所見


高カリウム血症では血清カリウム濃度が上昇するにつれて心電図が変化します2)。複数の電解質異常が同時に発生すると心電図波形が著しく歪むことがあり、心電図異常が容易に認識できなくなります。
テント状T波

テント状T波は、高カリウム血症の最もわかりやすい徴候です3)。幅が狭くて左右対称の先端が尖った高いT波になります。重要なのは、高さよりもT波の底面の狭まり方であり、T波の基部が2mm(80ms)以下の幅に狭まることもあります。

脚ブロック
高カリウム血症は、His-Purkinje系の伝導速度を低下させ、その結果、脚ブロックを引き起こすことがあります3)。
P波消失

重度の高カリウム血症は、心臓のナトリウムチャネル遮断と同様に、心筋細胞へのナトリウム流入を減少させます。細胞レベルでは、心筋活動電位の第0相の上昇速度が低下し、心電図においてQRS波が拡大しP波が消失することがあります。P波は出現しませんが、房室結節へと興奮は伝導するためQRS波を認め、洞室調律と呼ばれます。

正弦波

再分極異常を伴うQRS波拡大の究極のパターンは、非常に広いQRS波が、同様に広範なST-Tセグメントと融合してできる正弦波の出現です。正弦波とは、時間とともに周期的に変化する波形の一つで、その形が正弦曲線(サインカーブ)で表されるものです。

参考文献
3)Electrocardiographic manifestations of hyperkalemia. Am J Emerg Med. 2000 Oct;18(6):721-9.
書籍
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P194-195
実力心電図 P136-137
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P90-92



