不定軸(indeterminate axis)
不定軸とは、四肢誘導のすべての誘導でQRS波形の正と負の成分が等しい、あるいはほぼ等しい二相性(RS波またはQR波)の波形が認められる心電図のことです2)。電気ベクトルの方向と大きさが不明なため、電気軸の評価ができず、不定軸と呼ばれます。
四肢誘導の全てで正と負の成分が等しいということは、電気軸が四肢誘導の断面(冠状断)に対して垂直方向であることを意味します2)。
例えばⅠ誘導でQRS波形の正と負の成分が等しい場合、電気軸はⅠ誘導と直行する向きになります。冠状断で考えればaVFまたは-aVF方向になります。しかし、3次元で考えるとaVF、-aVF方向を含む平面上のどこかに軸が存在すると考えられます。
また、Ⅱ誘導でQRS波形の正と負の成分が等しい場合、電気軸はⅡ誘導と直行する向きになります。3次元で考えるとaVL、-aVL方向を含む平面上のどこかに軸が存在すると考えられます。
Ⅰ誘導とⅡ誘導の両方でQRS波形の正と負の成分が等しい場合、Ⅰ誘導とⅡ誘導の両方と直行するという条件を満たす電気軸は四肢誘導の断面に対して垂直方向のみとなります。その他の四肢誘導でQRS波形の正と負の成分が等しくてもこの条件は満たされます。
ちなみに四肢誘導の断面に対する垂直方向は2方向ありますが、基本的には心尖部方向に興奮は向かうため、体の前方方向へ向かう軸となります。
不定軸だけでは病的意義は乏しいとされており、正常の心臓でも見られることがあります1)。
北西軸を不定軸と呼んでいる書籍もありますが厳密には異なります。北西軸は-90°〜-180°に軸が存在しますが、不定軸は冠状断で表される平面上に軸は存在しません。
参考文献
1)Indeterminate QRS axis in a patient with hypertrophic cardiomyopathy. Int J Cardiol. 2007 Jan 2;114(1):e5-6.←28歳男性の肥大型心筋症による不定軸の症例報告
書籍
今さら聞けない心電図 P178-180
実力心電図 P92-93