陰性U波(negative U wave)
陰性U波は、主に心臓に起因する病的徴候であると考えられ、例外なく異常所見です。陰性U波は入院患者の約1%に認められ2)、V4-V6で見られることが多いです 。一般的には、弁膜症や虚血性心疾患と関連しています3)。
心筋梗塞と陰性U波
急性心筋梗塞では、他の心電図の変化よりも数時間前にU波の陰転化が確認されることがあります4)。
U波が陰性の場合、心筋梗塞後の心不全の発生率が高く、EFが45%未満であることを予測する感度は91%、特異度は82%と報告されています5)。
運動負荷と陰性U波
運動誘発性のU波陰転化は、有意な冠動脈疾患を予測することができ、運動中のU波の陰性化は、ST低下よりも虚血の特異度(88%対70%)および陽性予測値(77%対61%)が高かったという報告があります6,7)。
U波はST低下とは異なり局在判断が可能であり、運動負荷時の前胸部誘導でのU波の陰転化は左冠動脈前下行枝(LAD)近位部の虚血の高い予測因子であるとされています。
また、運動によって誘発される前胸部誘導の顕著な陽性U波は、後下壁の虚血における陰性U波の鏡像変化とされています6)。この所見は左回旋枝または右冠動脈の狭窄の特異的マーカーであると報告されています。
参考文献
1)Inverted U waves. Am J Med. 2006 Sep;119(9):746-7.
2)The clinical electrocardiogram: sensitivity and specificity. Acc Curr J Rev 1997;5: 71–75.
4)The electrocardiogram in early diagnosis of myocardial infarction. Acc Curr J Rev 1995;1: 25–27.
心電図のみかた、考え方 応用編 P380-385