肺性P波とは?

肺性P波(P pulmonale)

原発性肺高血圧症の心電図での肺性P
文献1より 原発性肺高血圧症の心電図

肺性P波とは、右房拡大に伴う心電図所見です。肺疾患による右房負荷を示す所見として知られています。

右心房が拡大すると、右心房の興奮が遅れ、右心房と左心房の興奮するタイミングが通常より多く重なるようになります。

右心房と左心房の興奮(脱分極)による2つの波形の和は、高く狭いP波を生じさせます。

この高いP波は尖鋭したピークを持ち、「肺性P波」と呼ばれます。

この高いP波は尖鋭したピークを持ち、「肺性P」と呼ばれます。

洞調律の場合は右房は左房よりも早く興奮します。よって右房の興奮は左房の興奮より遅れることはないので、P波の幅が延長することはありません。

洞調律の場合は右房は左房よりも早く興奮します。よって右房の興奮は左房の興奮より遅れることはないので、P波の幅が延長することはありません。

定義

肺性P波は以下のように定義されます1)

・下壁誘導(II、III、aVF)のP波振幅 ≧ 0.25mV

肺性Pは以下のように定義されます。下壁誘導(II、III、aVF)のP波振幅 ≧ 2.5mV

右房の拡大によって右房興奮のベクトルが下方に偏位するので下壁誘導においてP波は増高します。

原因

肺高血圧症など右心負荷を有する患者で見られることが多いです。

肺動脈圧が上昇すると右心室に圧負荷がかかり、その結果として右心室の圧が上昇します。右心室の圧が上昇すると、さらにその手前にある右心房に圧負荷がかかるようになります。

しかし、右心房はもともと高い圧力に長期間耐えられるようにはできていないので、やがて右房は拡大します。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、肺性P波は最も多く見られる心電図変化の一つです2)。COPDでも右心負荷は生じますが、膨張した左右の肺に心臓が押されて立位心となり、心房の興奮がより下向きに向かうことでP波が高くなるので必ずしも右房拡大しているわけではありません。

MSDマニュアルより 慢性閉塞性肺疾患の立位心

右心機能障害の指標

これまでの研究で、肺性P波は右心機能障害の指標とされており、肺高血圧症における有病率および死亡率の増加と関連していることが明らかにされています3,4)

参考文献

1)P-pulmonale and new-onset atrial fibrillation. Circ J. 2014;78(2):309-10. 

2)Electrocardiographic changes in chronic obstructive lung diseases. Z Gesamte Inn Med 1982; 37: 796 – 801.

3)The Relationship between Electrocardiographic Changes and Prognostic Factors in Severely Symptomatic Pulmonary Hypertension. Tanaffos. 2019 Jan;18(1):34-40.

4)Improvement in the electrocardiograms associated with right ventricular hypertrophy after balloon pulmonary angioplasty in chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Int J Cardiol Heart Vasc. 2018 May 25;19:75-82.

心電図の読み方パーフェクトマニュアル P70-71

ほぼ初めての心電図 P92-93

あなたが心電図を読めない本当の理由 P9-13

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