P波(P wave)

P波とは、心電図上の最初の波形であり、心房の興奮(脱分極)を表します。心房が興奮(脱分極)することで心房が収縮し、血液が心室へ流入します。

形態
・滑らかな輪郭
・II誘導の単相性
・V1誘導の二相性
・II誘導の単相性
・V1誘導の二相性
P波は1つの波形に見えますが、右房の興奮波と左房の興奮波を合わせてできた波形です。前半2/3が右房の興奮、後半2/3が左房の興奮になります。

V1誘導は右房の前面にあり、左房は背側にあります。心房興奮は右房→左房の順に進むため、P波の前半はV1電極に向かってくる右房の興奮を反映し、P波の後半はV1電極から離れる左房に向かう興奮を反映しています。そのためV1誘導では二相性のP波になります。

持続時間(幅)
正常なP波の幅は0.12秒未満(<120ms)とされています。基本的には小さな1マスが0.04秒なのでP波の幅が3マス未満であれば正常範囲内です。

振幅(高さ)
P波の振幅(高さ)は四肢誘導と胸部誘導で正常範囲が異なります1)。

・四肢誘導:2.5mm未満
・胸部誘導:1.5mm未満
・胸部誘導:1.5mm未満
軸
洞調律では心房の興奮が右上から左下に向かうのでP波のベクトル(電気軸)は0°~+75°の間にあり、Ⅰ誘導、Ⅱ誘導、aVF誘導で陽性、aVR誘導で陰性になります。

aVL誘導とⅢ誘導は洞調律であっても興奮ベクトルの向きによって陽性波にも陰性波にもなりえます。aVL誘導(-30°)はⅡ誘導(+60°)に直行しており、Ⅱ誘導を跨いで陽性と陰性が入れ替わります。

Ⅲ誘導(+120°)は-aVR誘導(+30°)に直行しており-aVR誘導を跨いで陽性と陰性が入れ替わります。

参考文献
1)ECG P wave abnormalities. Singapore Med J. 2013 Jan;54(1):4-7; quiz p.7.
書籍
心電図の読み方パーフェクトマニュアル P26-28
ほぼ初めての心電図 P82-93