心拍数と不応期
心拍数が変化すると心室の不応期もそれに伴って変化します。
犬の心臓を用いて心拍数と不応期の関係を研究した報告があります1)。左室ペーシングの刺激間隔を突然上げると、不応期は徐々に短縮して新たな定常状態に達します。
ペーシングレートの増加に伴う不応期の短縮効果(“on” effect)は、全体を100%とすると1拍目で約30%の短縮、2拍目でさらに10%の短縮が生じます。
よって、直前のRR間隔が不応期の長さに影響します。
逆にペーシングレートを突然下げると、不応期が徐々に延長し、数百拍後に新たな定常状態に達します。この不応期の延長効果を“off”effectといいます。
・心拍数低下→不応期の延長(off effect)
心拍数とQT間隔
心電図のQT間隔は不応期とほぼ一致して変化することが予測されます。
心室ペーシングレートの突然の増加または減少がQT間隔に及ぼす影響を解析している報告があります2)。
ペーシングレートを突然下げると、QT間隔は急激に延長した後、徐々に延長して数分で新たな定常状態となり、ペーシングレートを元に戻すと、QT 間隔は急激に短縮した後、徐々に短縮して元に戻ります。
・心拍数低下→QT間隔の延長
心室ペーシングレートが上昇したときと低下したときでQT間隔が定常状態に達するまでの時間が異なる現象はヒステレーシス(hysteresis)とよばれます。レートを下げた時の方が定常状態に達するまでの時間は長くなります。
参考文献
1)Refractory period of the dog’s ventricular myocardium following sudden changes in frequency. Circ Res. 1969 Feb;24(2):251-62.←麻酔開胸犬実験で心拍数と不応期の関係を報告。
2)Hysteresis of the ventricular paced QT interval in response to abrupt changes in pacing rate. Cardiovasc Res. 1988 Jan;22(1):67-72.←完全房室ブロックの患者7人を対象にしたペーシングの急激な変化に対するQT間隔の変化を報告した論文。