右室肥大(right ventricular hypertrophy)
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右室肥大はQRSベクトルを右前方に変位させ、しばしば右前胸部誘導でR波ピークの遅れを引き起こします。しかし、右室と左室のベクトルのバランスを変えるには、かなりの程度の右室肥大が必要であり、正常心臓では左室の興奮がベクトルのバランスを支配しているため、心電図による右室肥大の検出能力は低いと考えられています2)。
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診断基準
I誘導、V1誘導、V6誘導のRとSの振幅、およびV1誘導のR波のピーク時間から多くの診断基準が提案されています2)。
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右室肥大の心電図判定基準の感度は一般に低いですが、いくつかの判定基準は特異度が高く、最も精度が高いのは先天性心疾患で、後天性心疾患と成人の原発性肺高血圧症では中程度の精度、最も精度が低いのは慢性肺疾患です2)。
右室肥大は、特に先天性心疾患において、対照的な心電図パターンに基づいて分類されることが多いです。1つはrSR’パターンで、容量負荷を示唆するものであり、もう1つは、右前胸部誘導に主に高いR波が出現するパターンであり、圧負荷を示唆するものです。
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よく用いられている有名な基準を紹介します。
Sokolow-Lyon criterion
Sokolow-Lyon基準に基づく右室肥大は、以下のように定義されます3)。
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Myers criterion
Myersの基準では右室肥大は以下の基準を満たすものをいいます4)。
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・R波が0.5mV以上
右室に一番近い誘導であるV1で評価します。R/S比が1より大きい=R波がS波より大きいということです。これだけではS波が小さい場合にはR波が高くなくてもR/S比が1より大きくなってしまうので、R波が0.5mV以上も満たす場合に右室肥大となります。
参考文献
1)Right Ventricular Fatty Infiltration With an Abnormal ECG. JACC Case Rep. 2021 Jan 13;3(2):314-318.