tee-pee sign
複数の電解質異常が同時に発生すると心電図波形が著しく歪むことがあり、心電図異常が容易に認識できず、代謝異常の診断と代謝異常の重症度の推定が難しくなります。
低カルシウム血症、低マグネシウム血症、高カリウム血症を併発した症例では、高カリウム血症の特徴であるテントT波、低マグネシウム血症による顕著なU波、そして次のP波と重なるようなT波終末の延長が生じます。複数の電解質異常を合併した心電図における、T波の頂点から次のP波までの区間の異常をtee-pee signと呼びます。
T波の下降辺縁が延長し、等電位線に戻ることなく後続のP波に合流しているように見え、このT波の下降辺の異常な 「tenting」がグレートプレーンズの北米先住民が動物の皮や白樺の樹皮で作った円錐形の住居(teepees または tipis)を彷彿とさせることから、「tee-pee sign」と呼ばれます。この用語は、T波とP波の間(T-P)の異常な関係も示唆しており、Tとtee、Pとpeeがかかっています。
高カリウム血症によるテントT波の典型的な所見とは異なり、U波が顕著であるため、QT間隔は延長して見えますが、接線法(等電位線とT波の最大傾斜点の接線との交点としてT波の終点を特定する方法)を用いてQT間隔を測定すると正常範囲内となります。
参考文献
1)ECG manifestations of multiple electrolyte imbalance: peaked T wave to P wave (“tee-pee sign”). Ann Noninvasive Electrocardiol. 2009 Apr;14(2):211-4.←高K血症(6.7mmol/L)、低Ca血症(1.46mmol/L)、低Mg血症(0.35mmol/L)でtee-pee singを認め、電解質補正後は改善。