Ashman現象とは?

Ashman現象(Ashman phenomenon)

Ashman現象
文献1より
6拍目と14拍目に異常伝導を伴う心房細動を示す心電図(黒矢印)。直前の拍動における周期長(RR間隔)の変化、すなわち短-長-短周期(黒星)

Ashman現象(Ashman’s beat)は1947年にGouaux博士とAshman博士によって初めて記述されました。

長いRR間隔の後に短いRR間隔が続くと、そのQRS波の幅がwideになる現象のことです。つまり、先行するRR間隔が長い場合、後続のRR間隔が短ければ変行伝導を伴うということです。Ashman現象は心房細動や上室性不整脈でよく見られます。

Ashman現象(Ashman phenomenon)

RR間隔と不応期

Ashman現象は心筋(右脚・左脚)の不応期が「先行するRR間隔の長さ」に比例するために発生します。先行するRR間隔が短ければ活動電位の持続時間が短くなり、逆に先行するRR間隔が長くなれば活動電位の持続時間は長くなります。活動電位持続時間が長くなると不応期も長くなります。

Ashman現象(Ashman phenomenon)

RR間隔が長くなると脚の不応期も長くなり、それに短いRR間隔が続く(long-short sequence)と、片方の脚が不応期の状態で興奮が伝導するため、脚ブロックパターンの心電図になります(変行伝導)2)

Ashman現象(Ashman phenomenon)

一般的に右脚の不応期は左脚の不応期よりも長いため、右脚ブロックパターンが多く見られますが、左脚パターンも頻度が低いだけで見られます。

Ashman現象
文献1より 先行するRR間隔とQRS幅の違い

先行するRR間隔が長いほど、Ashman現象によるQRS幅はより広くなります。上記心電図は連結期は同じですが、先行するRR間隔が異なります。そして、先行するRR間隔が長い方がQRS幅が広くなっています。

・先行するRR間隔は828ms、375msの短い連結期→QRS幅 110ms

・先行するRR間隔は898ms、375msの短い連結期→QRS幅 120ms

診断基準

Ashman現象の診断にはFisch基準が提唱されています3)

・変行伝導QRS波の直前に先行する比較的長いRR間隔

・右脚ブロックパターンの変行伝導の初期ベクトルが正常なQRS波と同じ方向

・変行伝導QRS波の不規則なRR間隔

・完全な代償性休止の欠如

参考文献

1)Ashman phenomenon: a physiological aberration. BMJ Case Rep. 2013 May 24;2013:bcr2013009660. 

2)Ashman phenomenon dynamicity during atrial fibrillation: the critical role of the long cycles. J Atr Fibrillation. 2017 Oct 31;10(3):1656. 

3)Electrocardiography of arrhythmias: from deductive analysis to laboratory confirmation–twenty-five years of progress. J Am Coll Cardiol. 1983 Jan;1(1):306-16.

書籍

不整脈診療skill upマニュアル P118、223

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