高度房室ブロック(advanced atrioventricular block)

房室ブロックの中でも心房と心室の伝導比が3:1以下のものを高度房室ブロックと呼びます2)。つまり、心房の興奮3回に対して心室の興奮を1回以下しか認めない房室ブロックのことです。「3:1」、「4:1」、「5:1」房室ブロックなどが高度房室ブロックに分類されます。

心房から心室への興奮の伝導比(房室伝導比)は○:○で表現します。興奮が伝導する方向は心房→心室でありP→QRSの順番に表記されているので(P波の個数):(QRS波の個数)と考えると分かりやすいです。P波が2個に対してQRSが1個の時の房室ブロックは2:1房室ブロック、P波が3個に対してQRSが1個の時の房室ブロックは3:1房室ブロックと表現します。

簡便に高度房室ブロックと判断する方法として、2拍以上連続してQRS波の脱落を認めた場合に高度房室ブロックと判断する方法があります。これは2拍連続してQRS波が脱落した時点で、P波3個に対して2個の脱落したQRS波と脱落する直前のつながっているQRS波1個が存在するため3:1房室ブロックの条件を満たしていると言えるからです。

分類

高度房室ブロックは、3度房室ブロック(完全房室ブロック)と混同されることが多いですが、2度房室ブロックに分類されています。高度房室ブロックが3度房室ブロックと異なる点は、P波とQRS複合体の間にまだ関係性が残っているので、かろうじて房室伝導が保たれているということです3)。
・完全房室ブロック:P波とQRS波は無関係(房室伝導なし)

鑑別
完全房室ブロック

P波とQRS波がバラバラに出現して完全房室ブロックに見えても、1ヶ所でも他のRR間隔より短いRR間隔の部分があればP波とQRS波が繋がっている可能性があります。これは、心房の興奮が心室に伝導する、つまりP波の後にQRS波が続くことで補充調律のQRS波が出現するタイミングより早いタイミングでQRS波が出現することになるからです。

RR間隔の短縮が2ヶ所以上あり、その部分のPQ間隔が全て一致していれば決定的です。PQ間隔の一致はP波とQRS波がつながっていることを表しており、完全房室ブロックでは心房の興奮(P波)と補充調律の興奮(QRS波)が偶然にも2ヶ所以上で全く同じPQ間隔になる可能性は低いです。1ヶ所でもP波とQRS波が繋がっていれば高度房室ブロックとなり完全房室ブロックは否定されます。

参考文献
参考文献
レジデントのためのこれだけ心電図 P92-96
今さら聞けない心電図 P148-149
心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習 P48-49